野生イノシシ(Sus scrofa leucomystax)の通常のpHおよび高いpH(DFD)の胸最長筋(M. longissimus thoracis)の理化学特性および官能特性について比較した.各筋肉から厚さ1cmのサンプルを切り出し,沸騰させたNaCl水溶液(10 g/L)に浸漬し,中心温度が90℃に到達してから2分間の加熱を行った.クッキングロスおよび最大荷重を測定し,また多汁性,硬さ,味,および香りについて官能評価を行った.DFDサンプルは通常サンプルと比較してクッキングロスおよび最大荷重が有意に低く,また官能評価において有意に軟らかいと評価された.多汁性,味の強さ,および香りにはDFDサンプルと通常のサンプルとの間に有意な差は認められなかったが,味の許容性はDFDサンプルが通常サンプルと比較して有意に高かった.本研究の結果から,DFD猪肉は少なくとも多汁性,味,および香りは通常のものと比較して劣っていないことが示された.またDFD猪肉は通常のものと比較して加熱時に漏出する肉汁の重量が少なく,また軟らかいと評価されることが示された.