2025 年 96 巻 2 号 p. 137-142
本論では1960 年代英国におけるアニマルウェルフェア政策の成立経緯について,集約型畜産業に批判的な勢力が強い政治的影響力を発揮できた要因に着目して分析する.分析にあたっては,当時の新聞史料分析を手法として用いた.1960 年代英国では,養鶏を中心に集約的な家畜飼養環境が普及するにしたがい,畜産物の品質などを懸念する消費者などからの批判が高まった.こうした批判は動物保護団体が展開したキャンペーン活動などの影響によって広がりを見せた.さらに集約型畜産業に批判的な勢力は,議会選挙に際しての請願活動などを通じて,その政治的影響力を可視化させたことで,政府での規制検討にも影響力を及ぼした.消費者などからの批判が高まる中で,農業者は当該批判が必ずしも実態に即していないことなどを主張した.しかし,小規模農業者を中心に集約型畜産業が普及することへの懸念があったため,農業者による結束には限界があった.