日本畜産学会報
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和牛における子宮頸の形態形成に関する研究
山内 昭二
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1965 年 36 巻 11 号 p. 479-487

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抄録

1. ヒダの形成,輪状ヒダはC. R. 18cmの時期に初めて出現し,これによつて子宮頸の部分は子宮体および膣から明らかに区別される.この時ヒダは原基状のものも含めて4ケ或いは5ケ認められるが後位のものほど大きい.
C. R. 26cmのものからヒダの内部に輪走筋が進入しヒダが強化されるが,輪走筋の参加は後位のものほど顕著である.C. R. 32cm-35cmの時期にかけて輪走筋はすべてのヒダに進入する.このためヒダは全面的に肥厚し特に最後位のものは外子宮口を閉鎖するようになる.C. R. 55cmのもので最後位のヒダは膣腔内部に約3.8mm突出しPortio vaginalis uteriを形成する.
2. 筋層•縦走筋はC. R. 23cmの時に漿膜に接する結合織中に分化し始める.輪走筋はC. R. 26cmのものから出現するが,これは粘膜の直下に独自に分化してくることと,子宮頸の後位ほど発達が急激であることが大きな特徴である.C. R. 60cm以上のものでは縦走筋の一部は最後位のヒダの内部に進入している.
3. 粘膜と上皮C. R. 26cmの時期に至るまで粘膜は子宮角のそれと全く等質の様相を示す.上皮もまた同様であるが,全体的に烈しい起伏を示し,遊離縁もせん細な突出をもつ.この頃の子宮頸の腔には時に不定形の粘液性可染堆積物が認められる.
C. R. 28cmのものからは輪走筋の発達につれ粘膜固有層の領域は次第に狭小となる.上皮細胞は後位のものから次第に低くなるが,分泌性の形質は変らない.C. R.33cm-35cmの時期になると可染物はPAS陽性となるほか,上皮細胞の遊離縁にも陽性物質が見られるようになる.子宮頸の上皮と同等の様相が卵管上皮,子宮角の粘膜上皮,また子宮小丘の上皮などにも認められる.
4. 血管系およびその他初期には粘膜と漿膜の間に小血管は位置し,子宮頸壁を輪状に走る.筋層の分化と発達につれ究極的には輪走筋と縦走筋の間に位置するようになる.
C. R. 26cm-33cmの時期のもので,漿膜に接する結合織,また時として縦走筋中に白血球が認められる.胎令が進んだものでは粘膜の小血管の附近にも白血球の集合が認められる.C. R. 55cm以上の大形胎児では,これらの集合が大きくなるほか,大型細胞群が認められ,さらに赤血球の集団が加わつている.

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