日本畜産学会報
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構造分析を加えた牧草の組成および栄養価研究
(VII) 赤クローバー生草およびサイレージ中の窒素化合物の組成について
大島 光昭田先 威和夫柴田 章夫
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1965 年 36 巻 11 号 p. 488-495

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抄録

1. 赤クローバー生草およびサイレージを三大部分に分画し,各部への窒素の分布状況をしらべた.生草においては,繊維部26.9%,濃厚部44.4%,水溶部28.7%(うち蛋白態窒素4.7%)であつたが,サイレージでは,繊維部29.4%,濃厚部14.5%,水溶部56.1%となり,繊維部窒素はサイレージにより変化されにくいが,生草濃厚部蛋白質の70%ちかくが分解をうけ,サイレージ水溶部に移行することがわかつた.
2. 赤クローバー生草およびサイレージ濃厚部蛋白質のアミノ酸組成を測定して比較した結果,両者に差はみられなかつた.
3. 赤クローバー生草およびサイレージの水溶部非蛋白態窒素を比較したところ,サイレージには生草に比し14倍のアンモニア態窒素,6倍のアミノ態窒素が存在したが,アマイド態窒素および硝酸態窒素は非常に少なかつた.ペプチド態窒素は生草中に非蛋白態窒素あたり18.3%存在したのに対し,サイレージ中にはまつたく見られなかつた.
4. 生草水溶部の遊離アミノ酸含量を測定した結果,比較的多く含まれるアミノ酸を,全非蛋白態窒素当りの各アミノ態窒素量で示すと,アスパラギン酸,3.1%,γ-アミノ酪酸2.5%,セリン2.4%,プロリン2.2%,アラニン2.1%およびグルタミン酸1.9%であつた.他のアミノ酸は何れも上記アミノ酸の半量以下であつた.また,エタノールアミンが1.2%検出された.
5. 生草水溶部のペプチド構成アミノ酸を測定した結果,その含量は遊離アミノ酸とほとんど同じであつた.しかしその組成については遊離アミノ酸と相関はなく,遊離の状態では0.4%しか存在しなかつたグリシンが,ペプチド中には2.8%も存在した.
6. サイレージ水溶部の遊離アミノ酸を測定した結果,多く含まれるアミノ酸は,非蛋白態窒素当り,アラニン7.6%,γ-アミノ酪酸5.4%,ロイシン4.5%,グリシン4.2%およびバリン3.9%であつた.これを生草濃厚部蛋白質のアミノ酸組成と比較すると,アラニンが多く,アスパラギン酸,グルタミン酸およびアルギニンが少ないことを除いて非常によく一致した.サイレージ中には生草に含まれるアミノ酸のほかにα-アミノ酪酸,β-アミノイソ酪酸およびチトルリンの存在することが確認された.

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