日本畜産学会報
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血液型および蛋白質多型からみた黒毛和種2集団の遺伝的変異性
阿部 恒夫小松 正憲大石 孝雄天野 卓塩見 正仁辻 荘一福島 豊一
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1980 年 51 巻 5 号 p. 311-318

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抄録

近交係数が明らかにされている2地域の黒毛和種繁殖雌牛群について,血液型9座位と血液蛋白型17遺伝子座,計26座位を検索し,それらの遺伝子頻度をもとにして集団の遺伝的変異性の解析を試みた.1. 系統交配が行われ,近交度のやや高い(F=0.0895)M群212頭と他府県からの種雄牛の交配も行われ,近交度の低い(F=0.0222)N群146頭の比較において,平均ヘテロ接合体の割合(H)で示される遺伝的変異性はM群はN群にくらべて明らかに低かった.2. 遺伝子型の判別の可能な8遺伝子座を用いて,ヘテロ接合体の割合(H)の観察値を近交を考慮して算出した期待値と比較したところ,M群ではヘテロ接合体の超優勢効果が認められたが,N群ではむしろ逆の傾向がみられた.3. M群において,年齢別の遺伝的変異性を比較したところ,高齢(12~16年)の雌牛群の遺伝的変異性(H)は若齢(4~7年)の雌牛群にくらべてやや高い傾向が認められた.3座位において系統間の遺伝子頻度の差異が認められたが,平均ヘテロ接合体の割合では大差がなかった.4. 近交係数の上昇に伴って,平均ヘテロ接合体の割合は減少し,期待値とほぼ一致したが,座位によってはヘテロ接合体の割合の減少はみられなかった.

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