1980 年 51 巻 5 号 p. 325-330
家畜飼料中のカビ分布の実態を北海道十勝地方で調査した,対象飼料は,牛馬用の乾草,稲わらとサイレージで,特に粗飼料に多いとされるFusariumの分布を検索した.また,分離FusariumのTrichothecene産生牲を検索することを目的として,ウサギ皮膚試験による毒性試験を試みた.供試飼料のカビを検索したところ,乾草,稲わらおよびサイレージでは概ね105~166/gの検出頻度で,カビ分析をみると,乾草と稲わらでは似た傾向がみられ,多種類の菌種が存在していた.その中でもFusariumが多かった.また,サイレージのカビ分布は,Aspergillus (A. fumigatus), Geotrichum Mucorに限られた.Fusariumの優占菌種はF. graminearum であり,次いでF. nivaleであった.分離Fusarfum 53株の穀類培養したEtOH菌抽出物のウサギ皮膚試験を試みたところ,供試Fusariumのなかで3株が著しい炎症変化を誘起した.これらのFusariumのうち2株はF. graminearumであり1株は未同定菌種であった,F. graminearum 2株の抽出物質には,T-2 toxin, NeosolaniolおよびDiacetoxy-scirpenolなどが含まれていると推定されたが,Fusarium sp.の抽出物質については,さらに分析,同定する必要があると考えられた.