日本畜産学会報
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ヒツジの血糖および血中インスリン, グルカゴンの分泌調節におけるグルココルチコイドの役割
浜田 久清野 裕並河 澄
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1987 年 58 巻 12 号 p. 1011-1016

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抄録

飼料給与条件下においては, 副腎を摘出したヒツジでも一定水準以上の血糖を維持しており, この際の血糖調節にはグルココルチコイド (GC) 以外の因子が重要な役割を演じているのではないかと考えられる. そこで, 糖代謝に関与する重要なホルモンであるグルカゴンおよびインスリンの両膵ホルモンとGCの関係を明らかにする目的で以下の実験を行なった. 同一のヒツジに対して, 正常期, 副腎摘出 (ADX) 後GCを投与したADX-GC期ならびにその後GC投与を停止したADX期のそれぞれにおいて血糖, 血中インスリン, グルカゴンならびにインスリン/グルカゴン (I/G) モル比の変化を経日的に検討した. 1) ADX-GC期における血糖値は, 正常期に比し約30%高値を示した. ADX期の血糖はGC投与停止直後より急速に低下し, 正常期の10-20%低値を示した. ADX期ではその後も血糖は低値を維持した. 2) ADX-GC期の血中インスリンは正常期に比し2倍の高値を示したが, GC投与を停止して15日から30日を経過すると, ADX-GC期の1/3以下にまで低下した. これら三期の血中インスリン変動は, 血糖の変化と同様な傾向を示した. 3) 一方, ADX-GC期の血中グルカゴンは正常期に比し低値を示したが, ADX後期には正常期の値に回復した. すなわち, 血中グルカゴンは血糖および血中インスリンと拮抗した変化を示した. 4) そこで, インスリンとグルカゴンの相互関係をさらに詳細に検討する目的で, 両膵ホルモンのI/Gモル比にっいてみると, ADX-GC期の血中I/Gモル比は正常期の1.3に比し3.1-4.1と2倍以上高値を示し, ADX後期には正常期の1/2以下の0, 5の低値となった. 5) 以上の結果から, 飼料給与条件下におけるADX期の血糖維持は, 血中インスリンの相対的な低下と共に, ゲルカゴンが上昇してその糖新生作用によって行なわれていることが明らかとなった.

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