日本畜産学会報
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ラット精巣輸出管上皮細胞における精子貪食の研究, とくに走査型および透過型電子顕微鏡による観察
小山 久一
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1987 年 58 巻 12 号 p. 1067-1077

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抄録

結紮後のラット精巣輸出管上皮細胞 (上皮細胞) における精子貧食を明らかにするため, 走査型および透過型電子顕微鏡観察を行なった.走査型電子顕微鏡観察では, 結紮後24時間目に, 上皮細胞のうち非線毛細胞において精子貪食像が見られた。貪食精子の多くは頭部から非線毛細胞内に取り込まれ, 精子中片部および尾部からの貪食は極めて少なかった.精子貪食は次のような過程で進行するものと思われた.(I) 精子頭部の一部が非線毛細胞と接触すると, 接触部位を取り囲むように細胞表面に偽足状突起が形成される.(II) 偽足状突起は精子頭部を覆い, 精子頭部を細胞内に引き込み, ついで精子尾部方向に隆起伸張しつつ, 尾部をも取り込んでゆく.(III) 非線毛細胞内に取り込まれた精子は, 細胞膜アクロゾームおよび核の順に崩壊し, 消化される.
結紮後の上皮細胞内酸性ホスファターゼ反応は, 非線毛細胞に取り込まれた崩壊精子の周囲に高電子密度の沈着物として観察され, 貪食された精子は細胞内ライソゾーム酵素により消化されるものと考えられた.これらの結果から, ラット精巣輸出管上皮細胞における精子貪食は結紮処理により容易に発現させ得ることが示された.

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