日本畜産学会報
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ブタ卵胞卵の冷却の試み
宮本 元佐藤 英明石橋 武彦
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1988 年 59 巻 4 号 p. 329-334

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抄録

ブタ卵胞卵を0-20°Cの温度に冷却したときの生存性を明らかにするために,本実験を行なった.直径2-5mmの卵胞から卵核胞期の卵胞卵を採取し,20%の牛胎児血清を含む修正リン酸緩衝液(30°C)に浮遊させた.卵胞卵を0.5または3°C/分の速度で0,10および20°Cに冷却し,これらの温度に到達直後,または0.1,20および60分間保った後に室温下の培養液で洗浄後,培養した.卵胞卵を,冷却前または0.5°C/分の速度で0,10,20°Cに冷却し,ただちに室温下の培養液で洗浄後培養した場合,卵核胞期から第2成熟分裂中期に移行した割合はそれぞれ54,0,0および18%であった.また卵胞卵を3°C/分の速度で0,10,20°Cに冷却した場合,第2成熟分裂中期に移行した割合はそれぞれ0,0および3%であり,20°Cに冷却した卵の移行率は3°C/分より0.5°C/分の方が高かった.30°Cで卵巣から採取した卵胞卵を洗浄し小試験管に移した後,30°Cで60分間保持しても,培養後第2成熟分裂中期へ移行する割合は低下しなかったが,20°Cで60分間保持すると培養後の移行率は低下した.ジメチルスルフォキサイド,グリセロールおよびショ糖を添加しても,冷却された卵胞卵の生存性は影響を受けなかった.以上の成績から,本研究における実験条件下では卵核胞期のブタ卵胞卵を0-10°Cに冷却すると死滅し,ブタ卵胞卵は冷却処理にきわめて弱いと思われる.

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