日本畜産学会報
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日本短角種の育種における超音波による皮下脂肪厚測定値の利用
長嶺 慶隆林 孝佐藤 博西田 朗小松 繁樹
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1988 年 59 巻 4 号 p. 335-343

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抄録

日本短角種の皮下脂肪厚をAモードタイプの超音波測定機で測り,この測定値を直接検定にこおける選抜形質とすることについて検討した.また比較のため去勢肥育牛についても測定を実施した.
1) 直接検定牛における遣伝的パラメーター
88頭の直接検定牛を用い,平均体重(±標準偏差)476(±13)kg時に背および腰において,背正中線を対称軸にして左右6ヵ所(上部4ヵ所,下部2ヵ所)ずつの部位で超音波により皮下脂肪厚を測定した.上部の4ヵ所において左右の皮下脂肪厚の和は,0.42~0.63の遺伝率を示し,左右8ケ所の上部の皮下脂肪厚の和は0.87の遺伝率を示した.上部の皮下脂肪厚と一日平均増体量は正の遺伝相関を示した.
2) 間接検定の去勢牛における遺伝率
39頭の去勢肥育牛の皮下脂肪厚を平均体重(±標準偏差)578(±43)kg時に(1)と同じ方法により超音波を用いて測定した.上部4ヵ所および下部2カ所において左右の皮下脂肪厚の和の遺伝率は,0.34~0.60および0.34~0.75であった.
3) 測定時の体重による皮下脂肪厚の変化
88頭の直接検定牛のうち15頭について皮下脂肪厚を平均体重425kgおよび477kg時に超音波により測定した.農家の去勢肥育牛40頭の皮下脂肪厚を平均体重419,457,480kg時に超音波により測定した.直接検定牛においては体重増加による皮下脂肪厚の平均値の変化はほとんどなかった.上部の皮下脂肪厚による直接検定牛の順位は2度の測定時においてあまり変化しなかった.去勢肥育牛では体重の増加にともなって皮下脂肪厚が増大した.
皮下脂肪厚と一日平均増体量との間には正の遺伝相関が推定されたため,成長速度だけによる選抜は枝肉における脂肪の蓄積を早める可能性がある.これらの結果より超音波による皮下脂肪厚測定値を選抜形質として直接検定に採用すべきであろう.選抜形質としては遺伝率が高く,体重による順位変動の少ない上部の皮下脂肪厚の超音波測定値が望ましい.また超音波を用いて去勢肥育牛の皮下脂肪厚を測定し,飼養法や出荷日を調整することにより,さらに効率の高い可食肉生産が行なえるであろう.

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