除核後凍結保存したウシ未受精卵が核移植のためのレシピエント卵子として使用可能か否かを検討した.体外受精由来8~20細胞期胚の単一割球を除核未受精卵細胞質に電気的に融合し,体外での発生能を調べた.実験1では,活性化刺激前あるいは活性化刺激後のどちらかの時期に凍結するのが良いかを検討した.活性化刺激前に凍結した卵子をレシピエント卵子とした場合の2および8細胞期への発生率(60および24%)は,活性化刺激後に凍結した卵子を使用した場合(50および13%)よりも高い傾向にあった.実験2では,核移植卵の発生能に及ぼすレシピエント卵子の卵齢の影響を検討した.若齢凍結卵子をレシピエント卵子とした場合の8細胞期への発生率(15%)は,過齢卵子を使用した場合(26%)よりも低い傾向にあった.しかしながら,若齢卵子を用いた場合にのみ,低率(2%)ではあるが胚盤胞への発生が観察された.以上の結果から,あらかじめ染色体を除去した未受精卵を凍結保存後,レシピエント卵細胞質としてウシ胚の核移植に使用すると,核移植卵はきわめて低率ではあるが胚盤胞へ発生することが明らかとなった.