日本畜産学会報
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ヒツジのルーメン内微生物および無細胞ルーメン液区分における長鎖脂肪酸の量と組成に及ぼす濃厚飼料と粗飼料の給与割合の影響
佐々木 啓高橋 敏能萱場 猛夫
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2000 年 71 巻 7 号 p. 26-38

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抄録

濃厚飼料と粗飼料を8:2,4:6および0:10の比率とし,これらの飼料を3頭のルーメンフィステル装着ヒツジに給与した場合のルーメン内微生物(以下PB区分)および無細胞液区分(以下R区分)における長鎖脂肪酸の濃度と組成の経時変化について調べた.PB区分とR区分の総脂肪酸(TFA)および遊離脂肪酸(FFA)濃度は,濃厚飼料の多給に伴って増加した.TFAに占めるFFAの割合は,PB区分の場合,濃厚飼料の多給に伴って増加したが,R区分においては濃厚飼料を含む飼料を与えた場合よりも,粗飼料のみを給与したときの方が高い値で推移する傾向が示された.TFA組成に関しては,PB区分では濃厚飼料の多給に伴ってステアリン酸(以下C18:0)が増加した.また,FFA組成では,C18:0とオレイン酸(以下C18:1)が濃厚飼料の多給に伴って増加した.R区分のTFAおよびFFA組成では,濃厚飼料:粗飼料比が4:6(中間配合型)の飼料を給与したときに,C18:0が高い割合で推移することが認められた.これらの結果から,微生物による不飽和脂肪酸(USFA)主体のFFAの摂取や合成は濃厚飼料の多給時に旺盛に行われるが,飼料中脂質の加水分解は粗飼料のみを給与したとき促進されると考えられた.また,微生物による水素添加は,中間配合型の飼料を給与したときに促進されると推察された.

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