日本畜産学会報
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肉用牛における繊維消化に及ぼすセルラーゼ標品の添加効果
日野 常男三輪 岳宏浅沼 成人白石 久仁子北村 博溝口 秀城
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2000 年 71 巻 7 号 p. 46-50

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抄録

セルラーゼ標品の投与がウシにおける繊維の消化率を増加させるか否かを調べる目的で,ルーメン微生物のin vitro培養実験およびin vitro消化試験を行った.セルラーゼ標品として,至適pHが4-5のもの2種類と6-7のもの1種類を供試した.pH5.5-6.0の培養系では飼料のNDFは殆ど消化されなかったが,セルラーゼ標品の添加により消化率が顕著に高くなった.至適pHの低いセルラーゼ標品を用いたために,pH6.5-7.0の培養系ではその添加効果はそれほど大きくなかったが,それでも有意な効果が認められた.いずれの場合も,その効果は1種類より2種類2種類より3種類のセルラーゼ標品を添加した場合の方が大きかった.濃厚飼料を多給したウシに3種類のセルラーゼ標品を投与したところ,NDF消化率が顕著に増加した.また,ルーメン内に懸垂したナイロンバッグ中の乾草のNDFおよびセルロース粉末の消化率においても同様の効果が見られた.これらのウシのルーメン液pHは常時5.0-6.0であったので,至適pHの低いセルラーゼ標品の効果が大きかったと考えられる.粗飼料を多給したウシの場合は効果は小さかったが,3種類のセルラーゼ標品による有意なNDF消化率の増加が確認された.したがって,セルラーゼ標品の投与はウシにおける繊維の消化率を増加させ,その効果は濃厚飼料を多給している場合に大きくなると考えられる.

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