2020 年 25 巻 1-2 号 p. 24-30
有機物循環は湖沼の生態系を支える基盤であり,その理解は湖沼環境評価に不可欠である。湖沼において有機物の大部分は溶存して存在するため,溶存有機物(DOM)の動態把握は重要である。加えて,DOMの生物利用性は,水柱中におけるDOMのエネルギーフローに影響を与えるためDOMの質的情報にも注目する必要がある。DOM の生物利用性については分子サイズとの密接な関連が確認されているため,DOM の分子サイズを定量的に評価することができれば,DOM の量と質の同時把握が可能である。この同時把握は,我々の開発した全有機炭素検出を備えたサイズ排除クロマトグラフィーシステム(SEC-TOC)によって実現できる。世界最高レベルの性能でDOM の分子サイズ分布を定量評価可能である。本研究ではSEC-TOC の性能と琵琶湖とサロマ湖におけるDOM の分子サイズ測定結果を紹介し,湖沼環境研究におけるDOM の分子サイズの定量評価の重要性を議論した。