抄録
人々が、気温を原資産とする冷房コールオプションと暖房プットオプションを保有していると考え、電力価格と気温との関係を分析した。人は寒い時に暖房機器を、暑い時に冷房機器を稼働し、冷温と高温リスクをヘッジできる「権利」を有している。したがって、冷暖房機器の稼働はオプションとみなすことができる。冷暖房機器が電力で稼働するならば、これらのオプションの行使にあたっては電力料金を支払う必要がある。このような枠組みの下で、卸電力市場での1 日前電力価格を、曜日と休日に加え、気温に関するコールとプットオプションからのペイオフによって説明した。線形の状態空間モデルを用い、カルマンフィルターによって、時間と共に確率的に変化する暖房、冷房オプションの電力価格に与える影響を推定をした。この結果、電力価格の平均回帰性、大きな時間依存ボラティリティ、スパイクなどを特徴とする電力価格の変動を良く説明できる予測モデルを構築できた。