抄録
【目的】第37回学術大会において自転車エルゴメータによるパワーテストでのペダリングにおける股、膝、足関節可動域および運動パターンについて報告した。今回はペダリング動作時の股、膝、足関節角速度について検討した。【対象】女性サッカー選手15名(年齢:22.2±3.3歳、身長:159.5±4.7cm、体重:53.2±4.5kg)を対象とした。【方法】自転車エルゴメーターPowermaxVII(Combi社)を用いて10秒間の全力ペダリングを行い、ピークパワーを測定した。負荷は各被験者の体重の7.5%値とした。被験者の肩峰、大転子、膝関節外側裂隙、外果、踵、第5中足骨頭に直径2.5cmの測定用マーカーを貼り右側面よりデジタルビデオカメラで撮影した。画像は2次元動作解析装置Motus(Peak社)で解析した。股、膝、足関節の角度は以下のように定義した。1)股関節角度は肩峰と大転子を結ぶ線と、大転子と膝関節外側裂隙を結ぶ線のなす角度、2)膝関節角度は大転子と膝関節外側裂隙を結ぶ線と膝関節外側裂隙と外果を結ぶ線とのなす角度、3)足関節角度は膝関節外側裂隙と外果を結ぶ線と踵と第5中足骨頭を結ぶ線とのなす角度とした。各可動域における股、膝、足関節の伸展(底屈)・屈曲(背屈)角速度を調べた。【検討項目】解析データはペダリング開始後の回転が安定した3回転分を用いた。パワーテストの結果より序列化し、3群(上位・中位・下位群:各群5名)に分類した。各群でのペダル1回転周期における股、膝、足関節の伸展(底屈)と屈曲(背屈)角速度を対応のあるt検定により比較した。【結果】股伸展角速度は上位群201.3±40.5、中位群189.5±47.6、下位群219.7±13.7、屈曲角速度は上位群183.8±34.3、中位群165.7±35.2、下位群188.8±14.9であった。以下同様に膝伸展角速度は273.4±48.8、257.1±48.7、290.1±50.9、屈曲角速度は249.9±31.4、262.4±48.1、322.7±49.5であった。足底屈角速度は177.0±76.4、175.6±50.0、142.3±65.5、背屈角速度は199.2±104.2、200.3±78.0、351.2±369.7であった(度/秒)。 3群全てにおいて股伸展および屈曲角速度間で有意に伸展角速度が速かった(P<0.05)。下位群のみ膝伸展角速度と屈曲角速度との間に有意差を認め、屈曲角速度が有意に速かった。【考察】ペダルの位置が床からの最高点を上死点、最低点を下死点という。上死点から下死点へとペダルを踏み込む時、股伸展・膝伸展する(以下、駆動相)。下死点から上死点へとペダルを引き上げる時、股屈曲・膝屈曲となる(以下、回復相)。上位群の駆動相で股および膝伸展角速度が回復相の股および膝屈曲角速度に対して速く、下肢伸展を重視した動きになっていると思われる。上位、中位群の膝伸展ならびに屈曲角速度の関係は、統計学上有意差を認めないが、伸展角速度が屈曲角速度に対し速いまたは同等である。しかし下位群では、回復相での膝屈曲角速度が有意に速い。上位、中位群とは異なったパターンを示しており、下肢関節パワーが低値を示す要因の1つと考えられた。