抄録
【はじめに】我々は空気圧を利用して部分荷重できる加圧式免荷トレッドミル装置を開発している.今回,この歩行と水中トレッドミル歩行との違いを検討することを目的として、歩行中の酸素摂取量および心拍数を測定して文献との比較を行った。【対象】呼吸循環器系に異常のない健常成人8名(平均年齢26.3±2.5歳、平均身長164.9±5.4cm、平均体重59.6±7.5kg)を被験者とした。被験者には十分な説明の上同意を得た。【方法】同一被験者に対して加圧式免荷トレッドミル装置を用いて、免荷なし(全荷重)・体重の50%免荷・体重の70%免荷(30%部分荷重)のそれぞれで歩行を実施し、前野らによって報告されている水中トレッドミル歩行での結果と比較した。プロトコルは前野の方法と同様に、速度を3km/hから開始し2分毎に6km/h、9km/hと上げ、9km/hの一定速度を11分間とした。酸素摂取量の測定には呼気ガス装置(ミナト製AE-280)を、心拍数の測定には心拍数測定装置(ミナト製EBP-300)を用いた。実測値/(220-年齢)×100を算出して%最大心拍数とした。比較にはt検定を用いた。【結果】酸素摂取量は、50%免荷では開始2分では11.8±1.5ml/min/kgであり,2分以降すべてにおいて報告した水中歩行より有意に低かった(p<0.05)。また70%免荷では開始3分では14.0±2.05ml/min/kgであり,同様に3分以降は有意に低かった(p<0.05)。%最大心拍数は、50%免荷では開始3分では55.0±3.6%であり、70%免荷では開始5分では59.0±5.9%であった。いずれもそれ以降プロトコル終了まで、水中歩行より有意に低値を示した(p<0.05)。【考察】今回の実験から、同一プロトコルで加圧式トレッドミル歩行を行うと呼吸循環器系への影響は水中よりも少ないことが示唆された。これは、この歩行では、水の運動抵抗は受けないので下肢を前方へ振り出すための筋活動はほとんど生じないことや、空気圧によって骨盤帯が固定されて体幹が安定しバランス保持のための上肢筋活動がほとんど生じないことなどが原因であると推察される。酸素摂取量と%最大心拍数が有意に低いことから、本装置は下肢疾患に対する部分荷重歩行以外にも、呼吸循環器系への負荷を軽減しながら歩行する目的で使用し得ると考えられる。患者における測定は今後の課題である。