抄録
【はじめに】転倒の原因は内的要因と外的要因に分けることができる。地域や在宅高齢者の転倒発生率はおよそ20%であり、主に歩行中に起こると報告されている。歩行時における転倒の原因の1つにつまずきが挙げられ、このことから最小拇趾・床間距離などの内的要因が影響していることが考えられる。今回我々は、高齢者のつまずきに対するアンケート調査を実施した。アンケート結果から非つまずき群とつまずき群に分類し、両群の基本的歩行データおよび最小拇趾・床間距離との関係について検討したので報告する。【対象および方法】対象は高齢者15名(平均66歳)、アンケートの質問項目は_丸1_最近(1ヵ月)のつまずきの有無、_丸2_つまずき予防で気をつけていること、_丸1_で有と答えた人に対して_丸3_つまずきによる転倒の有無_丸4_つまずき時の状況の4項目である。最小拇趾・床間距離を測定するため、被検者に安静立位にて赤外線発光ダイオード(以下、LED)から床までの垂直距離とLEDから拇趾先端までの距離が等しくなるようにLEDを左下肢拇趾背側皮膚上に貼付した。これにより、拇趾背側皮膚上のLEDを中心とする半径の円周上に拇趾先端や足底があるため、計測肢のswing時に拇趾がどの位置にあっても、安静時立位の拇趾背側皮膚上のLED高を差し引くことより求められる。運動課題は被検者自身の快適歩行とした。床反力計の上で数回の歩行練習を行った後、歩行開始4歩目のつま先離れから踵接地までの遊脚相について10回計測を行った。測定項目は歩行速度などの基本的データと最小拇趾・床間距離などとした。使用器具は大型床反力計と三次元動作解析装置で行なった。統計処理は、10回施行の平均を代表値として対応のないt検定を用いた。【結果】アンケート結果から、非つまずき群10名、つまずき群5名となり、つまずき群においても転倒体験がなかった。つまずき時の状況は、平地歩行中2名、段差1名、階段昇降時2名であった。つまずき予防は6名(つまずき群4名、非つまずき群2名)が何らかに気をつけていた。その予防対策は、階段昇降時や疲れている時に意識して足を高く上げるなどであった。非つまずき群とつまずき群間で基本的データの値は、有意差が認められなかった。最小拇趾・床間距離は、非つまずき群が1.55±0.3cm、つまずき群が1.46±0.4cmであり、有意差が認められなかった(p>0.05)。【考察】今回の結果から、高齢者15名のうち3割弱がつまずき体験があり、つまずき体験のある人は何らかのつまずき予防対策をしている傾向があることが明らかになった。つまずきと最小拇趾・床間距離の関係では、つまずき群における最小拇趾・床間距離の低下は認めらなかったことから、最小拇趾・床間距離はつまずきに直接的な影響を与えるのではなく、間接的に他の要因と複合的に重なることでつまずきが起こる可能性が考えられた。