理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DO045
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
肩関節多方向性不安定性に対する理学療法の治療経験
*葉 清規川波 賢一平木 強志古岡 智子楫野 允也村瀬 正昭畠山 英嗣
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抄録
【はじめに】今回肩関節多方向性不安定症で、動作時に亜脱臼を呈するため、スポーツ活動のみならず、ADLにおいても著明な障害をきたしていた症例を経験し、理学療法を施行した結果、早期にADL障害を回復し得たので文献的考察を加え報告する。【症例】16歳男性高校2年生、野球部右投げ。中学時代投手で、トレーニングは200球程度投げ込み、腕立伏せ・ベンチプレスなど行い、時折投球時右肩痛を感じていたが続けていた。高校入学前、投球時に疼痛と共に亜脱臼するのを感じ始、その後症状増強し不変のため当科受診。【初診時所見右側】理学所見は、前・後・下方への不安定感を認め、肩挙上70°程度で不随意性に亜脱臼を呈した。自覚症状で動作時痛・夜間痛・亜脱臼時上肢へしびれ、視診で棘下筋萎縮・肩甲骨下方回旋位・内側浮き上がり、触診で大胸筋に強い圧痛、JOAscore(JS)50点であった。画像所見は、下方ストレス撮影で遠藤の分類よりII型・下降率60%、挙上位撮影でslipping陽性・FSHangle(FA)135°であり、前後撮影・MRIで明らかな器質的問題はなかった。【理学療法経過】肩甲胸郭関節機能訓練、腱板機能訓練、肩挙上自動介助運動より開始。挙上は90°程度まで仰臥位で大胸筋に、90°以上は腹臥位で広背筋・大円筋を徒手的に圧迫し、肩甲骨上方回旋の誘導を加え施行。18日目、ADLでは洗髪などのover head動作可能となるが、不意な動作、他動運動、回旋を加えると亜脱臼を呈した。60日後、下方への不安定感を認めたが、前・後方へは認めず、JS90点で、動作時亜脱臼を呈することはなく、ADL障害は消失した。画像所見は、下方ストレス撮影で下降率48%、挙上位撮影でFA85°であった。120日後、JS95点となったが、仰臥位他動挙上では亜脱臼を呈した。【考察】井樋は肩不安定症の病態を関節内圧異常と筋協調運動異常とし、後者は前者の結果生じる可能性が高いとしている。本症例は元来肩が緩く、outer muscle中心のトレーニングによる骨頭剪断力増加と、overuseによる関節内組織への繰り返す微小損傷により、関節包拡大し、肩甲上腕・胸郭関節機能不全を呈したと考えた。伊藤は随意性肩関節脱臼で、筋電学的に脱臼時方向別で個々の筋活動増加を報告している。本症例は随意性ないが筋活動により剪断力が増加していると考え、挙上角度別に筋に圧迫を加え抑制を図ると挙上可で、他動・圧迫なしの挙上で亜脱臼を呈した。これらのことから、選択的な筋の抑制を考慮し、回旋筋腱板・肩甲骨周囲筋を促通することで、動作時の亜脱臼を予防できると考えた。肩不安定症の自然経過は病態変化や自然治癒など報告されている。本症例は動作時亜脱臼を呈さなくなり、ADL障害改善したが、他動運動での不安定感は残存していることから、理学療法により良好な経過が得られたと考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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