抄録
【はじめに】当院では肩腱板損傷に対しては、まず保存的治療を行い、成績不良例に対して外科的治療を選択している。今回保存療法の成績を左右する因子を検討することで、保存療法としての理学療法を進める上での若干の知見を得たので報告する。【対象と方法】平成9年5月から平成14年9月までに当院で保存的に理学療法を施行した肩腱板損傷38肩37名(男性13名・女性24名、平均年齢65.7±11.8歳)を対象とした。理学療法は、安楽肢位や生活指導、リラクゼーション、筋硬結治療、関節モビライゼーション、関節可動域・腱板機能運動などで、外来にて週に1-3回施行された。全例に消炎鎮痛作用を持つ外用薬が処方された。 治療成績判定は、日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下、JOA-score)の疼痛および日常生活動作(以下、ADL)の項目を利用した。検討因子は、理学療法開始時及び終了時の肩MMT(内外旋は第一肢位で測定)、年齢、性別、損傷原因、不全・小・大断裂の別、関節内注射の有無である。JOA-scoreで疼痛が20点(ADLで疼痛無し)以上かつADLが9点(90%)以上を成績優良群(以下、A群)とし、それ未満の成績不良群(以下、B群)との間で、各因子の有意差を求めた。【結果】68.4%(26肩26名)はA群であり、26-134日(平均98日)の期間で患者の主観的満足が得られ、理学療法を終了している。うち1名は職業が重労働であり、その後就労時痛を訴え腱板修復術施行されている。B群は24-192日(平均112日)の期間理学療法が施行され、うち5名に修復術施行された。両群ともに重労働時の疼痛が消失した者は1人も存在しなかった。 有意差の検定では、MMT(Mann-Whitney U-test)のうち理学療法終了時の外旋のみ有意にA群が高かった(p<0.01)。外旋MMTがA群では5が12名、4が12名、3が2名であったのに対し、B群では5が1名、4が6名、3が4名、2が1名であった。年齢(Unpaired t-test)はA群が有意に高かった(p<0.05)。性別、損傷原因、不全・小・大断裂の別、関節内注射の有無(カイ二乗検定)は有意差がなかった。【考察】今回の結果、腱板損傷の保存療法としての理学療法において、肩外旋筋力の回復が重要な意義を持つことを示唆した。棘上筋腱損傷後にfunctional unitとしての腱板作用が低下し、棘下筋への依存が高まるためと推察される。しかし棘下筋断裂の確定診断が困難な症例も多く、棘下筋損傷の合併が影響を及ぼすことも否定できず、今後症例を増やして詳細な検討が必要である。年齢においてA群の方が有意に高かったが、これは高齢者ほど活動性も低く日常生活において肩へのストレスが少ないので、疼痛が生じにくい為と思われる。