抄録
【はじめに】高齢者に多発する大腿骨頚部骨折の治療は,できる限り早期からのリハビリテーションが必須である.そのために患者の能力に応じた術後プログラムの作成を考える際,術前術後を通し一貫した下肢機能を把握し得る評価表の必要性が感じられた.当院では,機能上最も重要と思われるADLに着目し,術前の状態をも評価し得る独自の評価表を作成し,臨床応用してきたのでの紹介する.【小牧式下肢ADL評価表】この評価表の特徴は全て問診により評価が可能であり,またその項目はいずれも基本動作を中心に,日常生活に必要な一般的身体動作の中から特に下肢機能に関する動作のみを選択したことにある.動作内容を3つの項目に分類,さらに全26項目に細分し総点100点とした.第1項目は起居・移動動作20項目で86点を満点とし,中でも歩行に関しては特に重要と考え40点を配した.第2項目は更衣・整容動作4項目で10点を,第3項目は排泄動作2項目で4点を配した.また排泄動作については可能,不可能により高齢者の満足度が大きく異なるため自立度を重視し,トイレの様式についても同時にアンケートできるようにした.評点は健常人を満点の100点とし,ADL上全く機能のないものを0点とした.ちなみに我々は本評価表で60点を獲得する事が洋式生活の自立レベルと判断している.【対象及び方法】平成12年1月より平成14年4月までに大腿骨頚部骨折で人工骨頭置換術(セメント)またはガンマネイル法を施行し,経時的評価が可能であった44例を対象とし,小牧式下肢ADL評価表を用い,その成績の推移につき検討した.また,評価する検者間の誤差を検討するため,各症例ごと二検者による評価を行い比較した.【結果】小牧式ADL評価表を用いての術後成績の推移は平均値で術前83.7点,術後1カ月月66.4点,3カ月71.7点,6カ月76.6点であり,ほとんどの症例において術後1カ月で洋式生活自立レベルに達しており,その後もADL能力の向上がみられた.また,検者間による誤差は最大で4点,平均1.2点であり,統計的有意差は認められなかった.【考察】大腿骨頚部骨折に対し小牧式下肢ADL評価表を用いた際の利点は1)術前の能力評価も可能であり,リハビリテーションのゴール設定に有用である2)日常動作をよく反映しており,実践的で下肢能力を的確に評価できる3)外来で比較的簡便に使用でき,高齢者にも理解しやすいことなどに要約される.この評価表を用いることにより短時間で容易に術前能力を知ることが可能となり,能動的なリハビリテーションを施行することに結びついた.ただ漫然と治療を行うのではなく,個々の能力や退院後の生活様式に応じた指導をしていくことが必要である.当院では術前のADL評価点数を参考に,退院時の目標設定や退院後の社会生活の指導を行っている.これらの点で有用な評価表であると思われる.