抄録
【はじめに】近年、歩行分析は高度な機器が使用されつつある。今回、人工膝関節置換術(以下TKA)後と変形性膝関節症(以下OA)の歩行能力の調査を目的に、簡易な方法を用い調査を試みた。【対象】TKA群:両側TKA患者10名、20膝、全例OA。65から79歳。平均71歳。OA群:両側OA患者12名24膝。67から80歳。平均72歳。対象群:過去1年間下肢痛、外傷、疾患の既往がなく、独歩可能な高齢者7名、14膝。64から80歳。平均71.3歳。尚、全て女性を対象とした。【調査項目】1)歩行時間(10m最大努力)2)一歩幅(最大)3)膝屈曲・伸展角度4)JOA-S(疼痛)5)JOA-S(総計)。2)は、一歩幅/下肢長×100を値とし、対象群は1)、2)のみ調査した。【方法】A)TKA群において、1)から5)それぞれの相関関係。B)OA群において、1)から5)それぞれの相関関係。C)TKA群・OA群・対象群間の比較・検討。【調査結果】数値はTKA群、OA群、対象群の順に平均値を示す。1)歩行時間〔秒〕6.9、14.4、6.3。2)一歩幅〔cm〕右112.0、65.6、133.3。左110.2、66.1、135.4。3)膝屈曲角度〔°〕右118.4、144.6。左116.7、154.4。膝伸展角度〔°〕右-0.7、-7.5。左-2.9、-8.8。4)JOA-S(疼痛)〔点〕右28.5、16.3。左28.5、15.8。5)JOA-S(総計)〔点〕右84.1、60.0。左82.7、60.0。【検定結果】相関性。A)歩行時間と屈曲角度〔右r=-0.74、左r=-0.58〕。歩行時間と伸展角度〔右r=-0.79、左r=-0.62〕。歩行時間とJOA-S(総計)〔右r=-0.88、左r=-0.71〕。一歩幅と屈曲角度〔右r=0.8〕。一歩幅と伸展角度〔右r=0.97、左r=0.83〕。一歩幅とJOA-S(総計)〔左r=0.73〕。B)歩行時間とJOA-S(疼痛)〔右r=-0.72、左r=-0.79〕。一歩幅とJOA-S(疼痛)〔右r=0.78、左r=0.77〕。C)歩行時間:有意差あり。(対象群<TKA群<OA群、p<0.01)。一歩幅:有意差あり。(対象群>TKA群>OA群、p<0.01)。また、年齢、歩行時間、一歩幅間それぞれにに相関性あり。【考察】両側TKA群において、膝屈曲・伸展角度と歩行時間、一歩幅間に相関を認めた。これは、TKA後の良好な可動域の獲得は、膝関節動的機能を向上させるという、飯盛らの報告と一致し、JOA-S(総計)が高い程、歩行能力が優れていると予測された。OA群において、JOA-S(疼痛)と歩行時間・一歩幅間に相関を認めた。生島らは、OA患者は疼痛と歩行能力間に深い関係があると述べており、我々も疼痛が強い程歩行能力が劣るという、同様の結果が得られた。TKA後は、良好な膝関節可動域を獲得し、OA患者は疼痛を取り除く事が、より良い歩行へ繋がると予想された。また、TKA群の歩行能力は、対象群と比べ劣り、OA群より優れている事も予想された。【終わりに】今回は歩行時間・一歩幅を用いた。この評価は広い空間を用いず、簡易に評価でき、運動療法の動機づけへ利用しやすい。今後、症例数を増やし、更なる調査に役立てたい。