抄録
【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)施行患者に対するクリニカルパス(以下,CP)のバリアンスを分析し,理学療法スケジュールとの関連性を検討した.【理学療法スケジュール】術後1日より病棟で座位練習,筋力強化,可動域運動を開始する.車椅子へ移乗後リハ室にて立位,歩行練習を進め,遅くとも術後14日までに杖歩行練習を開始し,術後28日で退院となる.退院基準は杖歩行の自立である.【対象】2001年1月から2002年7月までに当院整形外科にてTKAを施行した37症例を対象とした.原疾患は変形性膝関節症26症例,関節リウマチ11症例,平均年齢はそれぞれ71.4歳,61.4歳であった.【検討項目】術後から杖歩行開始までの日数(以下,杖開始日数),杖歩行開始から杖歩行自立までの日数(以下,杖自立日数),術後から退院までの日数(以下,退院日数)を検討した.【結果】_丸1_杖開始日数は平均13.5日,杖歩行が開始できなかったバリアンスは,12例(32.4%)であり,疼痛や不安による体重支持困難,深部静脈血栓症の発症が原因であった.杖自立日数は,杖歩行を14日までに行った症例が平均3.2日,15日以上の症例は平均4.3日であり,差はみられなかった._丸2_退院日数は平均31.1日であった.当院では目標退院日を術後28日としているが,日柄の良い日に退院を希望する症例が多く,術後35日を目標退院日とすると,29例(78.4%)の症例がCPに適応していた.バリアンスは8例(21.6%)であり,他部門との連携の悪さ,家族の都合,歩行に対する不安が原因であった._丸3_杖開始日と退院日のバリアンスは同一症例であっても原因が異なっていた.【考察】退院日においてバリアンスを生じた8症例について検討を行った. 4症例は医療チーム要因によるもので,術後既往症を続けて治療することとなり,他部門との円滑な連携がとれなかったためで,医師間の連絡の強化や十分な患者の把握が必要と考えられる. 1症例は社会的要因によるもので,予定退院日に家族が迎えにこれないためで,術前より家族を含めた充分なスケジュール説明が必要であると考える. 3症例は患者要因によるもので,歩行に対する自信の低下(不安)により退院日が延長したためで,リハ室や病棟において安全に歩行練習ができる環境を整え,看護師との情報交換や病棟での日常生活指導を行う必要があると考える.今回の検討から,杖開始日のバリアンスの多くは,疼痛や自信の低下などが要因であったが,それが必ずしも退院日のバリアンスに直接結びつくわけではなかった。退院時のバリアンスは医療チーム要因や社会的要因の影響が大きい事が明らかになった.以上より,これらの要因に事前に対処することで,CPに適応する症例が増えるのではないかと考える.