理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DO452
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
変形性膝関節症に対するTKA施行と未施行の足底圧解析
足底圧中心軌跡から得られた微分波形に着目して
*城下 貴司河野 弘額谷 一夫高橋 秀寿
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抄録
【はじめに】歩行中の床反力作用点の軌跡いわゆるElftmanのあおり歩行は健常者等でよく検討されてきた。今回は変形性膝関節症(以下膝OA)患者の歩行の特徴をTKA施行、未施行および健常者で比較検討する事を目的に上記の軌跡波形を独自に算出し、それを微分解析し検討した。
【対象及び方法】対象は膝OA患者2名。対照群として健常者10足を測定した。膝OA患者は1名(S)は両膝ともTKA(total knee arthroplasty)未施行の、年齢70歳、女性、グレードIIであった。他の1名(T)、年齢75歳、女性は、1996.5.23に左膝、1999.8.31に右膝のTKAを施行している。双方とも治療経過は良好であった。健常群は膝の明らかな疼痛や機能障害を認めない健常者10足(男性5足:女性5足)平均年齢27.8歳であった。被験者に「自然な速さで歩くように」と指示し屋内平地10steps歩かせた。足底圧分布測定装置(Parotec-Systemヘンリージャパン)を使用。被験者は裸足でセンサーを足底にアンダーラップで固定した。全体の圧値に対するそれぞれのセンサーの位置データにかかる圧で重み付けをして足圧中心軌跡データを算出し解析した。
【結果】健常者の軌跡波形は前後方向成分で共通しているのは2回緩やかになる時期が共通して認められた。微分波形からは、歩行周期の約21%と73%の2回に極小値が、歩行周期の約45%に極大値が認められた症例Sでは約14%で極大値、約70%で極小値が、症例Tでは約55%で極小値、約91%で極大値が認められた。
【考察】軌跡データーの微分は速度データーであることを考えると健常者では、立脚中に制動、駆動、そして再び制動した。TKA未施行の症例Sでは立脚初期の制動は認められずに駆動と1回の制動のみが認められる。TKA施行の症例Tでは逆に立脚初期から中期にかけての1回の制動とその後の駆動がみとめられるのみで2回目の制動は認められなかった。症例Sの立脚初期(1回目)の制動が認められずに駆動してしまうのは多数の先行研究があるように立脚初期にthrust現象が起こる事によることからかもしれない。それに対してTKAを施行した症例Tでは立脚後期(2回目)の制動が認められないのは立脚後期になにかしらの機能障害があることを示唆していると思われた。以上から、TKA未施行の症例では立脚初期に、TKA施行後の症例では立脚後期に着目して治療する必要があると思われる。今後は症例数を増やし上述の2回の制動の運動学的な役割を解析していく必要がある。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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