抄録
【はじめに】2001年5月よりセメントレス人工股関節全置換術のクリティカルパス(Critical Path:CP)を導入し、第37回本学会において報告した。当院におけるCPは、導入以前より使用していた理学療法プログラム(術後8週全荷重)をもとに整形外科医、看護師と共に作成し、段階的に術後の全荷重時期を早期化してきた。2002年8月からは術後2週で全荷重許可とし、当初の目標としていた術後3から4週で退院するCPを使用している。CP導入により術後の入院期間が短縮され、理学療法士の役割等についても変化が認められたので報告する。【対象と方法】1994年6月から2002年10月までに手術が行われた159例175股のうち同一入院中両側手術、大腿骨骨切り術併用等の8例11股を除外した151例164股を対象とした。CP導入前の101股を非CP群、CP導入後の61股をCP群とし、さらにCP群を術後3から6週全荷重とした50股をCP1群、術後2週全荷重とした11股をCP2群とし、全荷重開始時期、術後入院期間等について調査した。【結果】非CP群とCP群は年齢62.3±10.4歳/59.9±9.8歳、男性13股/15股、女性88股/46股、変形性股関節症85股/49股、その他16股/12股、全荷重開始時期8.0±1.7週/4.6±1.7週、術後入院期間は74.1±18.4日/46.1±15.8日であった。全荷重開始時期と術後入院期間において有意差(p<0.01)が認められた。CP1群とCP2群は年齢60.2±9.9歳/58.3±9.8歳、男性10股/5股、女性40股/6股、変形性股関節症39股/10股、その他11股/1股、全荷重開始時期は5.0±1.5週/2.4±0.7週、術後入院期間は49.1±15.3日/32.3±9.2日、術後の合併症はCP1群で感染症1名であった。全荷重開始から退院までの期間は非CP群18.0±15.6日、CP1群13.9±11.2日、CP2群13.8±7.8日でそれぞれにおいて有意差は認められなかった。全荷重開始から退院までの期間が15日以上は非CP群46股(44.6%)、CP1群16股(32.0%)、CP2群4股(36.4%)で、それらの理由は歩行不安定、血栓症等他疾患の影響であり3群において共通していた。【考察】CP導入から1年以上が経過し、整形外科医の指示、理学療法士の判断のもとステム沈下、カップ移動等の合併症なく安全かつ段階的に全荷重開始時期を早期化することができ、術後入院期間が短縮できたと考えられる。しかし、全荷重開始から退院までの期間に違いが認められず、さらに術後入院期間を短縮するためには、この期間を短縮することが重要であると思われる。また当院における退院の基準は、疼痛なく全荷重可能となり、T字杖を使用して屋外歩行が安定し、ADLが自立することであるため、理学療法士の役割が大きく関与すると思われる。現時点では術前からパンフレットを使用し脱臼肢位の予防や入浴方法、床上動作等日常生活における注意点の指導を行なっている。今後は術後早期に病棟等にて歩行の確立、靴下を含めた更衣に必要な股関節可動域の早期獲得などを考慮し、術後入院期間の短縮に努める必要があると考える。