理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP598
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
頸椎に対する可動域回復のための関節モビライゼーションの効果
*大森 圭宮本 重範橋田 浩青木 光広
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抄録

【目的】関節モビライゼーションは、動きに制限のある部位に対して徒手による物理的外力を加えることによりで関節の運動機能を正常化させることを目的として実施される。本研究は健常成人を対象に頸椎に対する関節モビライゼーション手技を施行し、それによってどの程度の頸椎回旋可動域が増加するかを、客観的かつ定量的に明らかにする事が目的である。【方法】対象は頸部の疾患がなく頸部回旋可動域に左右差がみられた、健常成人男性18名(平均年齢25.5±3.8歳)、健常成人女性12名(平均年齢23.6±3.9歳、)の合計30名とした。また、健常成人男性8名(平均年齢28±5.2歳)、健常成人女性4名(平均年齢24±4.7歳)の合計12名を対照群とした。すべての対象者に研究の目的・方法等を説明し同意を得た。頸椎関節可動域は、超音波式3次元動作解析システムZebris CMS70P(Zebris社製)を使用し、左右最大回旋を測定した。測定は関節モビライゼーション手技前、下部頸椎に対する手技後、上部頸椎に対する手技後の3項目において、各5往復の頸部最大回旋を自動運動にて行った。対照群においては手技を行わず、頸椎最大回旋のみ同様に3回連続して行った。手技はMaitlandによる関節に対する振幅運動のGrade IVを10秒間、下部頸椎はC6、C7に対して、上部頸椎はC1-2間に対して施行した。手技側は対象者の頸椎回旋可動域の左右差で、可動域が減少している側とした。測定により得られた左右最大回旋可動域データは手技前を100%として、下部頸椎手技後、上部頸椎手技後も百分率で算出しそれぞれ比較した。統計学的有意水準は危険率5%とした。【結果】対照群の頸椎回旋可動域変化は1、2、3回目の全ての比較において、有意差は認められなかった。左回旋方向および右回旋方向に手技を施行した群のいずれも、それぞれ下部頸椎に対する手技を行った後の同側の回旋可動域が手技前と比べ有意に(p<0.05)高かった。左回旋方向に手技を施行した群において、下部頸椎に対する手技実施後の回旋の総和が手技前と比べ有意に(p<0.05)高かった。右回旋方向に手技を施行した群において、上部頸椎に対する手技施行後の右回旋可動域が手技前と比べ有意に(p<0.05)高かった。【考察】関節モビライゼーション手技を行わない対照群の計測で、頸椎自動回旋可動域に再現性を認めたことから、今回の測定に必要な自動運動のみでは頸椎回旋可動域の増加には影響を及ぼさないことが確認された。左右いずれの方向においても下部頸椎手技後に回旋可動域が増加したことから、関節モビライゼーション手技の効果が示唆された。本研究の対象者はすべて健常成人であったが、頸椎の可動性障害者に対して関節モビライゼーションは可動域回復のために有効な手段であると考える。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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