抄録
【はじめに】 入院中のリハビリテーション(以下, リハ)は退院後のADLを想定して進められるべきである. しかし,退院後のADLを詳細に把握する方法は確立されておらず,入院リハで習得したADLが退院後にどれだけ活かされているのかを知ることは難しい. 我々は, 簡易なFunctional Independence Measure(以下FIM)質問紙を郵送して退院後ADLを調査している.今回は,その結果を入・退院時のFIMと比較し退院後ADLの実態を分析した.【対象・方法】 対象は,2000年6月から 同年12月,2001年6月から2002年2月に当院リハ科を退院した脳卒中患者で,有効回答の得られた119名(男性78名,女性41名)とした(有効回答率77.2_%_).調査方法はFIM質問紙による郵送調査とし,返送後, 回答内容に不備があった場合は電話での聞き取り調査も実施した(以下, 調査時). なお,FIM質問紙は当院で新たに作成した流れ図方式であり,その信頼性は確認済みである.回収された調査時のFIM運動合計が向上した群と低下した群とに分けて, 入・退院時のFIM運動合計などを比較した.【結果】 FIM運動合計は退院時に比べ,調査時で低下する傾向にあった(差の中央値-5点). 得点差を層別にみると0-4点の向上が22%, 1-5点の低下が22%, と両者が最も多かった. 次いで6-10点の低下が全体の18%を占めていた.FIM認知合計は維持されていた(差の中央値0点).FIM運動項目ごとの比較では, 食事・整容・更衣・移動が特に低下していた.調査時のFIM運動合計が向上した群と低下した群とに分けて入・退院時のFIM運動合計をみると, 入院時の得点では, 低下群が48.6点, 向上群が60.1点であり, 低下群が有意に低かった. 退院時の得点では, 低下群が72.0点, 向上群が72.5点であった. FIM利得(退院時FIM運動合計-入院FIM運動合計)は低下群で23.4点, 向上群で12.4点となり低下群の方が有意に高かった. また, 両群の平均在院日数は低下群では83.0日, 向上群では72.6日であり, 低下群の方が長い傾向にあった.【考察】 調査時のFIM運動合計が低下する群の特徴として, 向上群より入院時の得点は低いものの, 比較的長い日数をかけて,退院時には高い利得を得ていることが挙げられた.このことから,低ADL状態の患者が長い入院期間をかけて習得したADLは, 退院後の転帰先では我々の予想以上に定着していないことが懸念された. また,食事や更衣といった, 動作(行為)時間が長くなる項目に低下が目立つことから,介助者の安易な手助けなども予測され,家族教育の不足が示唆された. 以上より,入院リハ中はADLの改善幅だけでなく,習得したADLが安定して発揮できるように訓練すること,また,動作(行為)時間の長い項目に関しては家族教育が特に重要であると考えられた.