理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: EO405
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成人中枢神経疾患
短下肢装具の底屈制動モーメントが片麻痺者の歩行に及ぼす影響
*中村 大輔萩原 章由島津 尚子溝部 朋文佐鹿  博信山本 澄子
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抄録
【はじめに】短下肢装具(以下AFO)が発生する底屈制動モーメントとは、足関節底屈に抗する力である。適切な底屈制動モーメントは立脚初期の緩やかな足関節底屈を実現する。この動きが正常歩行における衝撃吸収や推進力保存の役割を果たし、適正なアライメントでの荷重と円滑な重心移動を可能にする。今回、AFOの底屈制動モーメントが片麻痺者の歩行に与える影響について分析し、歩行練習を行う際にAFOの底屈制動モーメントを考慮する事の重要性を示唆する知見を得たので報告する。【対象・方法】当センターで理学療法施行中の片麻痺者2名に対し、AFOの底屈制動モーメントを変え、平地での自由歩行をビデオ撮影し歩容を比較した。また、歩行速度・重複歩距離を測定し比較した。2名とも撮影・測定に際し説明と同意を得た。AFOの底屈制動モーメントを変えるため油圧ユニット足継手付きプラスチックAFO(以下油圧AFO)と靴べら型AFOを用いた。油圧AFOは立脚初期の底屈制動モーメントを調整することができ、立脚中期以降の足関節背屈に対しては制限および制動を行わない構造である。また遊脚時の足関節背屈を補助する戻りバネが内蔵されている。【症例検討】症例1は75歳男性、脳梗塞・右片麻痺(Br.stage4・感覚軽度鈍麻・筋緊張軽度亢進)。撮影・測定は発症から75日目、歩行能力は靴べら型AFO・T杖を用いて病棟内監視レベル。靴べら型AFOと油圧AFOを用い比較した。底屈制動モーメントはPTが歩容を見て適切に調整した。油圧AFOでは、靴べら型AFOより麻痺側立脚中期以降の股関節伸展が増加し、さらに麻痺側の振り出しが円滑になった。また、歩行速度および重複歩距離の増加が見られた。適切な底屈制動モーメントにより立脚初期の緩やかな足関節底屈が可能となったと考えられ、症例1にとって靴べら型AFOの発生する底屈制動モーメントは過剰であったと推察された。症例2は75歳女性、脳梗塞・左片麻痺(Br.stage5・感覚中等度鈍麻・筋緊張軽度亢進)。撮影・測定は発症から113日目、歩行能力は簡易型AFOとT杖を用いて病棟内監視レベル。油圧AFOを用い底屈制動モーメントを2段階に調整し比較した。大きめに底屈制動モーメントを設定した際には、小さめの設定で見られなかった立脚初期の緩やかな足関節底屈と足底接地から立脚中期にかけての股関節伸展が出現し体幹の前傾も軽減した。歩行速度・重複歩距離に著明な変化はなかった。これらから大きめに設定した底屈制動モーメントのほうが、症例2にとってより適切であったと推察された。【考察】立脚初期におけるAFOの底屈制動モーメントが立脚中期以降の歩容に与える影響は大きく、下肢だけでなく体幹を含めた全身のアライメントにまで波及する。PTがAFOの底屈制動モーメントを考慮し使用者に適した底屈制動モーメントを発生するAFOを用いて歩行練習を行うことは重要であることが示唆された(ビデオ供覧)。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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