抄録
【はじめに】近年、医療制度の変化と共に、脳卒中に対して急性期からの専門医療とリハビリテーション(以下リハ)を併行して行うことの重要性が認識されている。しかし、急性期病院では機能・能力障害が残存せず、リハ医療の関与のないまま自宅復帰果たす患者も多い。回復期から維持期の脳卒中患者では、体力の低下が著しいことは多く報告されてはいるが、このような患者における運動耐容能の低下の有無については報告されていない。今回我々は、運動障害を認めない脳梗塞患者において、心肺運動負荷試験(CPX)を実施し、運動耐容能の評価とそれに基づいて行う運動処方の重要性について検討を加えたので報告する。【対象】2002年1月から10月までに当院神経内科に入院し、心房細動を含む心臓由来と考えられた症例と、頸部血管エコーにて内頚動脈に高度病変を持った症例を除いた、40代から60代の脳梗塞・TIA患者11例(男性5例・女性6例、年齢56.2±5.7歳)を対象として検討した。運動障害及びdeconditionigの影響を考慮して、入院時より麻痺を認めず歩行自立していた症例とした。【方法】自転車エルゴメーターと呼気ガス分析装置を用い、3分間の安静の後0Wattのwarm-upを4分間施行し、15Watt/minのランプ負荷にて症候限界性に実施した。運動中は12誘導心電図と1分毎の血圧測定を行った。【結果】CPX施行例11例において三浦による健常人を対象とした基準値と比較した結果、嫌気性代謝閾値(AT)は8例に低下を認め、その内7例はATが3METS以下であった。また3例において12誘導心電図上心筋虚血性変化を示した。ATは対象例では10.6±2.4ml/kg/min、基準値では12.9±0.7ml/kg/min、AT LOADにおいても各々49.5±7.8wattと62.3±8.5wattで、基準値に比べ低下を認めた。ATが3METS以上(H群:4例、57.8±4.3歳)と以下(L群:7例、55.3±1.7歳)の比較では、Peak VO2は各々21.1±1.6ml/kg/min、14.8±0.8ml/kg/min、ATは13.5±0.5ml/kg/min、8.9±0.4ml/kg/minで、いずれにおいてもL群に有意な低下を認めた。AT LOADにおいてもH群では56.8±4.1watt、L群では45.4±1.8wattでL群に有意な低下を認め、minimumVE/VCO2はH群では29.6±0.8ml/ml、L群では34.4±1.3ml/mlのL群の有意な上昇、ΔVO2/ΔLOADはH群では10.6±0.5ml/min/watt、L群では8.8±0.3ml/min/wattのL群の有意な低下を認めた。【考察】入院時より運動障害を認めない脳梗塞後患者においても、退院時のCPXによって運動耐容能の低下が示され、また日常生活が可能とされるATの最低基準である3METSを満たない症例も多く存在した。さらに心電図上3例に冠動脈疾患を合併していることが示唆され、CPXはこのような症例の運動処方に際して重要であると考えられる。ATが3METSを満たない症例では著しい運動耐容能の低下とAT時の仕事率の低下、換気効率や骨格筋の運動効率の低下も示唆された。【結語】今後の包括的なリハ医療では、運動障害の有無にとらわれず、CPXを行った上で運動耐容能の向上を目的とした運動処方と指導も必要であると考えられた。