抄録
<はじめに>痙性麻痺の尖足は、heel contactの減少・足関節背屈角度の減少・toe clearanceの悪化等の歩行困難や歩行スピード低下をもたらしている。痙性を抑制する方法として、薬物療法などがあるが、運動療法として痙性筋の持続伸張が用いられる。起立台による下腿三頭筋の持続伸張が、痙性を抑制し歩行能力が改善するかを急性効果と慢性効果に分けて検討した。<対象>当院入院中の痙性を有する麻痺患者4名{片麻痺患者3名:症例1、31歳の男性、右被殻出血、Br.stageIV;症例2、52歳の女性、左被殻出血Br.stageIV;症例3、72歳の男性、左基底核脳梗塞、Br.stageIV; HAMによる対麻痺患者1名:症例4、47歳の女性}であった。いずれも、T-caneを用いて歩行可能であった。<方法>20分間の起立台立位(足関節背屈角度20度)を2週間(午前1回・午後1回/1日)施行し、治療開始前と治療継続1週目、2週目に起立台立位の前後で足圧分布と足関節背屈可動域、歩行速度、VASによる自覚症状を評価した。足圧分布はHenry-Japan社製Parotec-Systemを用いた。症例3は評価時に歩行指導を行った。<結果>1回の起立台立位前後の変化を急性効果、治療前と治療継続1週目、2週目の起立台立位前との変化を慢性効果と表す。足圧分布は、踵部の圧を比較すると、急性効果としての足圧増加は各症例で2.8N/cm、10.01N/cm、17.18N/cm、2.53N/cmだった。慢性効果としての足圧増加は7.6N/cm、8.75N/cm、14.42 N/cm、5.26N/cmだった。また、足圧軌跡は全ての症例において起立台立位前に比し、中足部から前足部まで延長した。背屈角度の改善は急性効果が2例、慢性効果が2例であった。10m歩行時間は治療開始直後に短縮し、その後の変化は見られなかった。自覚症状はつっぱり感は残ったものの他2項目は0に改善した。<考察>今回の検討において起立台立位は足関節背屈可動域、歩行速度、足圧分布、VASのいずれにおいても急性効果あるいは慢性効果があった。歩行指導をした症例は足圧軌跡の急性効果は見られなかったが、歩行指導した症例は足圧軌跡の延長が起立台立位施行直後からみられた。これはheel contactからtoe offを促すように歩行指導をすることによって急性効果が発生したと考える。今後は症例を増やし、起立台立位の継続をやめてからも効果が持続するのかを検討したいと考えている。