抄録
【はじめに】新生児集中治療室(NICU)では、理学療法士の様々な治療的介入が行われるようになり、当院においても発達の援助を中心に取り組んでいる。早期産児やハイリスク児は呼吸・循環機能の未熟さから呼吸管理を必要とし、さらに先天性心疾患を伴い早期の手術が余儀なくされる児も存在する。しかし、当院では呼吸理学療法(CPT)に関してはNICUスタッフが主体となり行っているため、理学療法の依頼はほとんどないという実情であった。今回、先天性心疾患術直後のCPTに携わる機会があり良好な結果を得、NICU内のCPTに対する意識の高まりを見出したので報告する。なお、当院の先天性心疾患の治療においては、近隣病院で心臓手術を行うため、術前・術後の管理及び治療が中心であるという特徴を持っている。【症例紹介および経過】2002年3月から10月の間に近隣病院で先天性心疾患手術を受け、呼吸器疾患を合併しCPTの依頼があった4名である。 症例1:術後16日目右中葉無気肺認める。術後26日目微弱な肺胞呼吸音、湿性ラ音を聴取。CPT施行。術後28日目無気肺改善。症例2:術後2日目右上葉・左下葉無気肺認める。術後7日目右上葉の呼吸音聴取不可。CPT開始。術後11日目抜管。術後18日目無気肺改善。症例3:術翌日左上・下葉無気肺認める。術後2日目当院帰院後よりCPT開始。CPT前肺胞呼吸音、副雑音ともに消失。CPT後肺胞呼吸音聴診可となり、術後4日目無気肺改善。症例4:術後5日目右上葉無気肺認める。術後7日目CPT開始。 症例1から3は初回、呼吸音が消失していたため医師、看護師と連携し宮川の推奨するジャクソンリースを使用したbaggingで胸郭拡張を促しながら呼気介助を施行した。症例4は新生児痙攣を伴っており、CPT施行中も痙攣出現し生理的機能が不安定であったこと、肺胞呼吸音が微弱ながら聴診可能であったことから呼気介助及び体位排痰法を主に施行していたが改善の兆しがなく理学療法開始4日目に上記の方法を施行した。4症例ともbaggingを併用したCPT後肺胞呼吸音の聴取が可能となった。その後の管理は体位排痰法を遵守したポジショニング及び呼気介助法・振動法を個別に取り組み、看護師へも伝達し継続した。【考察】先天性心疾患術後の無気肺に対しCPTは有効であった。baggingの併用は吸気をより有効に促し呼気流量を増大させ分泌物除去が容易となる。無気肺部分の選択的な吸気介助は円滑な胸郭可動性の改善も図り、その後のプログラムに好影響であった。さらに、手術直後は血行動態が不安定な時期であり、医師、看護師と連携を図り施行することにより、安全なCPT施行が可能であった。また、即時効果を示すことができた結果、NICUスタッフのCPTの効果が認識され術後の症例紹介率の向上となった。そして、早期紹介へ意識改革が図れ、早期CPT開始が術後の呼吸管理として位置づけられ始めているのではないかと感じている。