抄録
【はじめに】Cockayne症候群(CS)は、常染色体劣性遺伝で、早老症の代表的疾患である。鈴木によるとCSは、乳児期後期より精神運動発達遅延が顕著となり、痙直型の運動障害の進行で関節拘縮へ発展し、10歳過ぎには進行性食欲不振による衰弱、呼吸器感染、腎不全などにより死亡するとされる。当院においてCSの二症例にVojtaによる運動療法を長期に実施した。その臨床所見から得られた発達の経過と理学療法などについて報告する。【症例1】10歳11ヵ月の男児。在胎41週3535g正常分娩で出生。頚定4ヵ月、自座8ヵ月、四つ這い移動9ヵ月、つかまり立ち10ヵ月、伝い歩き11ヵ月で可。1歳6ヵ月時に発達の遅れのため理学療法開始となり、Vojta法をPTおよび母が毎日2回から3回実施した。初期評価時は、四つ這いと伝い歩きを移動手段とし、両下肢伸展傾向、円背で胸郭前後幅が大きく、背臥位が不安定。1歳10ヵ月で3m程度独歩可能となったが、不安定。特有の顔貌や発達障害、網膜色素変性などの所見により2歳時にCSと診断された。3歳頃より下肢筋の強剛性や外反尖足が著明となり独歩困難で、歩行器を使用した。3歳8ヵ月で4ヵ月間Vojta法を中断したところbanny hoppingで脊柱後彎が増強したためVojta法を再開し、2ヵ月後に再び交互性の四つ這いが可能となった。現在食欲不振による全身衰弱があるが、Vojta法を継続し四つ這い、歩行器歩行や車椅子操作が可能である。【症例2】15歳11ヶ月の男児。40週3585gで前期破水、切迫仮死で出生。頚定4ヵ月、自座8ヵ月、腹這い移動9ヵ月で可。1歳時に発達の遅れのためVojta法を開始した。初期には、運動緩慢で脊柱後彎した投げ出し座りが多く、胸郭は扁平で胸骨下陥没を呈した。1歳で四つ這い、2歳でつかまり立ちを始めた。3歳時に、特有の顔貌や発達障害、頭蓋内石灰化などによりCSと診断された。当初、約10m歩行器歩行可能であったが、下肢筋の強剛、外反尖足が著明となり、徐々に歩行困難となった。9歳で両側股関節内転筋・大腰筋・大腿二頭筋・アキレス腱延長術を施行したが、膝の屈曲制限がおこり、四つ這い困難となった。13歳より経口摂取不良のため経管栄養開始し、15歳で心肺機能低下し、酸素投与している。現在辛うじて座位保持、車椅子操作が可能である。呼吸機能低下に対しても、胸郭が拡張し、呼吸が楽になるためVojta法を継続している。【考察とまとめ】二症例の特徴的な臨床症状の経過は、1)乳児期後半からの発達遅延、2)3歳前後から脊柱円背、下肢筋の強剛性が増強し機能低下する、3)10歳前後から全身状態が悪化する、などにまとめられる。以上の症状に対して、1)3歳までの運動発達を促通し、2)3歳以降は運動機能を維持する、3)全身状態の低下を防ぐ、などが理学療法の目的として挙げられる。CSの特徴的な退行の経過を示した二症例であるが、Vojta法の継続は、機能低下を防ぎ、全身状態やQOLを保つことに役立つと考える。