理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: GO521
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小児疾患
著しい尖足が改善した脳性麻痺児の報告
*岩下 文治松尾 圭介相良 研
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抄録
【はじめに】脳性麻痺の尖足に対する治療手段として各種整形外科的手術が選択され、多くは術後理学療法(以下PT)を経過して姿勢・運動の改善はもとより日常生活活動の改善まで至る。しかし中には外反扁平足やしゃがみ位歩行などの不良アライメントを生じてしまう例もある。今回我々はかなり強い尖足に対し各肢二種の下腿三頭筋延長術と、Heel Gait Cast(以下、HGC)療法を含む術後PTを行った結果、尖足および歩容が著しく改善した脳性麻痺児1例を経験したので以下に報告する。【症例紹介】1.診断/年齢/性別:脳性麻痺(痙直型両麻痺)/5歳/男。2.術前PT評価(左右の評価は右/左と記載):1)歩行能力:屋内では独歩を用いているが転倒することが多い。歩容はToe-inを伴う著しい尖足歩行であった。跳躍・走行は可能。下肢装具は未使用であった。2)足関節背屈角度(膝伸展位、他動運動):-30度/-50度。3.整形外科的手術:1)目的:立位アライメント改善および安定した歩行の獲得。2)術式:両下腿三頭筋延長術および両大腿骨減捻骨切り術を施行した。前者は腓腹筋後退術(Strayer法)と腓腹筋・ヒラメ筋筋膜切開(Vulpius法)を行った。4.術後経過:術後8週目に歩行器を用いた歩行(両短下肢装具着、以下AFO)を病棟内移動に取り入れた。9週目の時点で足関節背屈角度が-10度/-5度であった。9‐16週目の間にHGC療法を4回実施した。この間背屈反応強化を主とした立位バランス訓練を実施した。HGC終了時の足背屈角度は10度/10度となった。背屈反応強化はHGC後も継続した。20週目に病棟内を独歩とし、28週目に退院した。5.退院時PT評価:1)歩行能力:独歩は十分に安定した。歩容は軽度の左股関節内旋を伴うheel-toe歩行となった。立脚中期以降の足関節底屈は乏しかった。跳躍及び走行は不可能であった。2)足関節背屈角度:25度/20度。3)筋力テスト:足関節底屈筋群P/Pレベル。4)足関節の随意運動:両足関節の底屈・背屈・内返し・外返しの各運動が可能であった。【考察】強い外反扁平足やしゃがみ位歩行等を伴うことなく著しい尖足歩行を改善できた。改善の要因は、1)アキレス腱延長術を避け、足底屈筋力低下を最小限に止める為に筋線維への侵襲の少ない術式二種を用いたこと、2)尖足が残っている段階でHGC療法を約1ヶ月間実施したこと、3)HGC療法の時期も含め背屈反応強化を約4ヶ月間実施したこと、4)関節可動域訓練の際、二次的な外反を作らないよう注意を払ったこと、5)本児が足関節の各運動が十分できる程の良好な下肢の随意性を有していたこと、などが推察される。今後は症例を蓄積していくことでどの因子が有力であったのか明確にしていくこと、および足関節底屈筋力低下の対策を検討することが課題であると考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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