抄録
【はじめに】低出生体重児における脳性麻痺の相対的な増加が指摘されており、主原因として脳室周囲白質軟化症(以下PVL)が注目を集めている。一方で脳性麻痺児の運動発達の評価を定量的に行ったものは少ない。今回、PVLに由来する痙直型脳性麻痺児の立ち直り反応時間と膝窩角(以下PA)を測定し、運動発達レベルとの関連性について検討した。【対象・方法】対象は当院に外来通院した児のうち、PVLと診断された31名で、最終来院時の修正年齢は3ヶ月から5才9ヶ月の間であった。外来通院時に児の「体に働く体の立ち直り反応時間」と「PA」を測定した。体に働く体の立ち直り反応は1)坐位から側方へ倒すことにより骨盤を回旋し下側の下肢を引き抜いて対称的な腹臥位になるまでの反応(以下BOB)2)腹臥位から骨盤を回旋し上体を起こして対称的な坐位になるまでの反応(以下BOB:Sit-up)の2種類の反応を用いた。児の定頚・寝返り・ハイハイ・四つ這い・つかまり歩き・独歩の獲得月齢を調査し、これらの運動発達と立ち直り反応時間、PAとの関連性についてそれぞれ検討した。【結果】1)BOBの平均反応時間は非定頚から寝返りレベルまで順次短縮し、統計上有意な差を認めた。ハイハイ、四つ這いレベルでは統計上は有意な差は認められないものの寝返りレベルの反応時間よりも遅延した。ハイハイから独歩レベルまでの反応時間は順次短縮し、特にハイハイとつかまり歩き、ハイハイと独歩、四つ這いと独歩レベルの間には統計上有意な差を認めた。寝返り獲得レベルの反応時間は13.4±12.2秒であった。2)BOB:Sit-upの平均反応時間はハイハイから独歩レベルまで順次短縮し、特にハイハイとつかまり歩き、四つ這いとつかまり歩き、つかまり歩きと独歩レベルの間には統計上有意な差を認めた。独歩獲得レベルの反応時間は2.9±1.3秒であった。3)PAの平均角度は各運動発達レベル間で統計上有意な差は認められなかった。独歩レベルではPAが120°以下の児はいなかった。四つ這いレベルではその前後と比較して平均角度が小さくなる傾向にあった。【考察】運動発達レベルの向上と共に立ち直り反応時間も短縮した。言い換えると反応時間を短縮する事が寝返りや独歩の獲得につながるといえ、寝返り獲得においてはBOBの反応時間が10秒前後、独歩獲得においてはBOB:Sit-upの反応時間が3秒前後まで短縮されることが必要と考える。このような運動獲得に対する反応時間の目安はセラピストや両親にとって運動発達及び理学療法に対する具体的かつ有用な指標となると考える。PAに関して120°以上の維持は歩行獲得の必要条件の1つであると考える。四つ這いレベルで平均角度が小さくなっている事と歩行獲得には120°以上の維持が必要な事から、痙直型脳性麻痺児にとって長期間の四つ這い継続は歩行獲得の阻害因子となりうる事を示唆している。