理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: HO059
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呼吸器疾患
呼吸理学療法を施行した肺切除患者の術後肺合併症リスク因子の検討
*鈴木  昭広柳沢 千香子押見 雅義斎藤 康人斎藤 恵礒部 美与横関  真理洲川 明久
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抄録
【はじめに】 当センターでは周術期呼吸理学療法(以下、CPT)を施行している。CPTの目的は、術前からの呼吸法、排痰法の習得や術後の早期離床を促すことで、術後合併症を予防する事である。近年、高齢者や併存疾患を有する患者へも手術適応が拡大され、周術期管理の重要性は高まっている。しかし、術後肺合併症に対する報告は少ない。そこで、CPTを施行した肺切除術患者において、術後肺合併症の有無とリスク因子について検討したので報告する。【対象と方法】 2000年4月から2002年3月に原発性肺癌が疑われ肺切除術を施行した324例のうち、CPTを施行した患者102例(平均年齢69.8±9.5歳 男性83名 女性19名)について術後肺合併症の割合とリスク因子を検討した。分析には、ロジスティック回帰分析を用い術後肺合併症の有無を従属変数とし、危険率5%以下を有意と判定した。共変量として年齢・肺切除部位・%VC・FEV1.0・FEV1.0%・6MD(距離desatulation)・呼吸筋力(MIP・MEP)を挙げた。術後肺合併症の判定は術後第14病日までとし、臨床症状、検査所見、胸部_X_線像で行った。【結果】 術後肺合併症は4例(4%)に生じた(無気肺3名、誤嚥性肺炎1名)。これらは術前から予測されるリスク因子(肺活量低下、1秒量低下、全摘出術)が認められていた。しかし、諸因子と術後肺合併症有無の間には有意な関係は認められなかった。【考察】 術後肺合併症に影響を及ぼす因子として、年齢、切除部位、術前肺機能、運動耐容能などが諸家の研究により報告されている。今回の対象者も、平均年齢70歳と高齢であり、また術前から呼吸器系の併存疾患を24例(COPD10例、喘息6例、肺結核後遺症7例 塵肺症1例)が有していた。<BR> 今回の研究でもこれらの因子が関わると考えていたが優位な関係は認められなかった。<BR> 本研究では対照群を設定したものでなく、純粋なCPTの介入による影響は検討できない。しかし、全ての対象者にCPTを施行したことで、術前から予測された術後肺合併症を予防できる可能性が示唆された。<BR> 今後は、共変量について再検討すると共に、症例数を増やしていきたい。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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