抄録
【はじめに】咳嗽能力は喀痰喀出に大きく影響するため、気道分泌物の多い呼吸器疾患患者や胸・腹部外科術後の患者にとっては重要な能力と言える。本研究では、呼吸リハビリテーションとしてよく行われている、呼吸筋および運動トレーニングの継続が自発咳嗽能力にどの程度効果があるのかを検討した。【対象および方法】健常成人15名(平均年齢24歳、男性9名、女性6名)を対象とし、各被験者に対して自発咳嗽能力測定、肺機能検査、呼吸筋力測定、最大下運動負荷試験を実施した。咳嗽能力は咳嗽時のPeak Flow(PCF)とし、座位、仰臥位、半側臥位、半腹臥位の4肢位で測定した。肺機能検査では、肺活量(VC)、努力性肺活量(FVC)、一秒量(FEV1.0)、一秒率(FEV1.0%)、最大呼気流量(PF)を座位で測定した。呼吸筋力は口腔内圧計を用い、最大吸気圧(PImax)、最大呼気圧(PEmax)を座位で測定した。最大下運動負荷試験はramp負荷法にて行い、無酸素性作業閾値(Ventilation Threshold :VT)をV-slope法によって算出し、その時の負荷量(VT-W)を求めた。次に被験者15名を無作為に5名ずつの3群に分け、それぞれ異なったトレーニングを実施した。すなわちI群は呼吸筋トレーニング群:PImaxの30%負荷で1日30分間の吸気筋トレーニング:吸気抵抗負荷器具Thresholdを使用、II群は運動トレーニング群:VT-Wで1日30分間の自転車エルゴメーターによるトレーニング、III群は呼吸筋+運動トレーニング群:PImaxの30%負荷で1日15分間の吸気筋トレーニングとVT-Wで15分間のトレーニングとした。各群ともトレーニング時間は合計で30分とし、週3日間で4週間継続させた。尚、各群間における年齢や身体特性には差がなかった。そしてトレーニング前後におけるPCFの4肢位での変化および肺機能、呼吸筋力、VT-Wの変化を比較検討した。【結果】I群のPCFは座位を除く3肢位で有意に上昇し、また呼吸筋力はPImax、PEmaxともに有意に上昇した。肺機能検査ではVCのみ有意に上昇し、VT-Wも有意に上昇した。II群のPCFは各肢位で上昇を示したものの有意な差は認められなかった。VT-Wは有意に上昇したが、その他の測定項目については有意な変化は認められなかった。III群のPCFは4肢位すべてにおいて有意な上昇が認められ、またPImax、VC、VT-Wにおい有意な上昇が認められた。【考察およびまとめ】これまで咳嗽能力には咳嗽直前の最大吸気量や吸気筋力が影響することが報告されてきた。本研究の結果から、吸気筋が強化されることによって咳嗽能力が向上することが明らかとなり、特に呼吸筋トレーニングと運動トレーニングを併用して行うと、より効果が高まることが示唆された。