理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP112
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運動・神経生理
経皮的電気刺激の周波数の違いがラット前脛骨筋の筋線維肥大効果におよぼす影響
*岡本 眞須美中居 和代友利 幸之介豊田 紀香片岡 英樹中野 治郎沖田 実吉村 俊朗辻畑 光宏
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抄録

【目的】 ヒトの骨格筋の多くは遅筋・速筋線維が混在した混合筋であり、一つの筋内でも部位によって筋線維タイプの分布は異なっている。そのため、電気刺激によってすべての部位の各タイプの筋線維を肥大させるためには周波数の設定が重要と考えられる。一般に、低周波は遅筋線維の、高周波は速筋線維の筋線維肥大に有効とされているが、この見解は主に神経を直接刺激した結果に基づいており、経皮的に骨格筋を刺激した際の基礎データは不足している。また、臨床では一つの骨格筋に周波数を変えて刺激することは治療効率から考えても困難なことが多い。そこで、本研究では、すべての部位の各タイプの筋線維を効率よく肥大させる周波数を明らかにする目的で、その基礎実験として10Hzと50Hzの周波数での経皮的電気刺激によるラット前脛骨筋の筋線維肥大効果を筋内深度別、筋線維タイプ別に検討した。【材料と方法】 実験動物には、8週齢のWistar系雄ラット7匹を用い、麻酔下で右側前脛骨筋(以下、刺激側)に10Hz(n=4)と50Hz(n=3)の周波数で経皮的電気刺激を行った。具体的には、右側前脛骨筋の近位部と遠位部に位置する皮膚に表面電極を貼付した後、電気刺激装置トリオステム300を用い、パルス巾250μm、電流4mAで通電した。通電時間は1日30分間とし、週5回の頻度で、延べ2週間行った。なお、左側前脛骨筋には電気刺激は行わず、非刺激側とした。実験終了後は、麻酔下で両側前脛骨筋を摘出し、急速凍結させた後にその連続横断切片をH&E染色、ATPase染色(pH 4.2、4.5、10.5)した。そして、前脛骨筋を浅層と深層に区分し、各部位の筋線維直径をタイプ別に計測した。【結果】 前脛骨筋の筋線維タイプの分布状況は、浅層はタイプIIB線維のみで構成され、深層はタイプI、IIA、IIB線維が混在していた。タイプIIB線維の平均筋線維直径を非刺激側と刺激側で比較すると、10Hz、50Hzどちらも刺激側が増大しており、有意差を認めた。そして、この結果は、浅層、深層とも同様であった。しかし、深層のみに存在するタイプIIA・I線維の平均筋線維直径を非刺激側と刺激側で比較すると、10HzではタイプI線維のみに、50HzではタイプIIAのみに有意差を認め、刺激側が増大していた。【考察】 今回の結果から、経皮的電気刺激による筋線維肥大効果は、筋内深度の影響はなかったと考えられる。一方、刺激周波数の影響を見ると、10HzではタイプI・IIB線維に、50HzではタイプIIA・IIB線維に筋線維肥大効果を認めた。すなわち、神経を電気刺激した諸家の報告と同様に、経皮的電気刺激においても遅筋線維であるタイプI線維には低周波、速筋線維であるタイプII線維には高周波が有効と思われた。しかし、遅筋・速筋線維の中間型であるタイプIIA線維が10Hzの周波数で筋線維肥大を認めなかった要因は定かではなく、加えて、混合筋に含まれるすべてのタイプの筋線維を効率よく肥大させる周波数の設定は今後さらに検討が必要と考える。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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