理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: LO427
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スポーツ
スポーツ活動と脛骨前方移動量の変化
*浦辺 幸夫新田 祐士弓削  類堤 惠理子小林 梨沙隅田 祥子岩本 久生木下 めぐみ吉田 奈美田中 浩介
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抄録
【目的】第37回学会でサッカーボールのキック前後に脛骨前方移動量を測定したが、全力で50回ボールをキックした際の脛骨前方移動量に有意な変化は得られなかった。我々の測定ではKnee Arthrometer KT-2000(MedMetric社)の測定値の変動係数が33.1から33.6%になり、トレッドミルランニングで脛骨の前方移動量が増加することを示したKirkleyら(2001)のデータの24.6から27.6%よりも大きく、測定値の誤差が影響したのではないかと考えた。今回、検者内信頼性を確認したうえで、信頼性の最も高い測定者を選出し、Kirkleyらのトレッドミルランニングに倣い追試研究を行った。【方法】対象は膝関節に既往のない女子大学生9名である。年齢(平均±SD)は21.2±0.7歳、身長は156.4±4.3cm、体重は49.7±4.2kgだった。検査の候補者(PT学生、大学院生で脛骨前方移動量の測定には熟練していない者)を6名選出した。検査の候補者は練習を行った後、9名の対象についてKT-2000により左膝関節屈曲20°で133Nの脛骨前方引き出し力を加えた。級内相関係数ICC(2,1)=0.67であり、ICC(1,1)=0.58から0.82(平均0.72)であった。ICC(1,1)=0.82であった候補者を測定者に決定し、各測定を3回行い平均値をとることで、信頼性の向上をはかった。トレッドミルランニングは5%の仰角をつけ、Walk(2.8km/h)、Jog(6.4km/h)、Run(8.2km/h)の3種類として、疲労困憊に至るまで行った。3種類のランニングはランダムに選択し、測定間は少なくとも1週間以上の期間をおいた。ランニング前後のKT-2000による脛骨前方移動量を測定し、対応のあるt検定で平均値の差を比較した。【結果】Walkは全員が30分、Jogは平均26分、Runは20分遂行可能であった。Walkにおける左脛骨前方移動量(平均±SD)は6.16±1.95mmから6.12±1.93mm (NS)に、Jogで6.16±2.01mmから6.20±1.92mm (NS)に、Runで6.09±1.87mmから6.24±1.76mm (p<0.05)に変化した。【考察】今回の測定値の変動係数が28.2から32.6%になったことからも分かるように、測定値の再現性が高まることが、「スポーツ活動によって脛骨前方移動量が変化するか」という課題を検討する前の基本条件として必要になることが示唆された。Runにおいて9名中7名で脛骨前方移動量が増加することが追認されたことをもとに、今後、サッカーボールのキック動作など今回と異なる運動形態でACLへの影響の測定を進めたい。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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