抄録
【はじめに】膝前十字靭帯(以下、ACL)再建に自家膝屈筋腱を用いる際、半腱様筋腱単独の場合と薄筋腱を追加して行われる場合がある。今回、半腱様筋腱単独で再建を行なった群(以下、ST群)と薄筋腱を追加して再建を行なった群(以下、STG群)の膝屈曲筋力を測定し、経時的変化について検討したので報告する。【対象と方法】対象は平成7年から12年に自家膝屈筋腱を用いてACL再建術を受け、術後2年以上筋力測定を行ない得た167例167膝(平均年齢28±11歳、男性80名、女性87名)である。内訳は、ST群124名、STG群43名であった。両群に対し、術前および術後3ヵ月ごと24ヵ月にわたって膝屈曲・伸展筋力を測定した。CYBEX6000を用いて角速度60deg/sec、180 deg/secでピークトルクを測定し、術前健側値に対する各時期の患側値の比について両群を比較した。統計学的処理はt検定を用い、危険率5%未満を有意差ありとした。【結果】60 deg/secでは、術前および術後3ヵ月とも両群間に有意差を認めなかったが、6ヵ月でST群100±25%、STG群91±20%、9ヵ月でST群103±24%、STG群86±24%、12ヵ月でST群94±26%、STG群84±29%と有意差を認めた(P<0.05)。さらに、15ヵ月でST群96±23%、STG群83±17%(P<0.01)、18ヵ月ではST群97±23%、STG群88±22%(P<0.05)で有意差を認めたが、21ヵ月、24ヵ月には有意差を認めなかった。180 deg/secでの膝屈曲筋力と膝伸展筋力にはいずれの時期においても両群間に有意差を認めなかった。【考察】自家膝屈筋腱を用いたACL再建術後の膝屈曲筋力についての報告は多いが、採取部の違いによる影響を調べたものは少ない。本研究の結果、ST群に比べてSTG群の膝屈曲筋力の回復は遅れるが、術後2年以内には両群の膝屈曲筋力に差がなくなることが判明した。したがって、術後の理学療法によってより早期に筋力が回復する可能性があり、今後、それらを考慮した理学療法が必要であると考える。