抄録
【はじめに】脳卒中片麻痺患者の早期リハビリテーションにおいて,短下肢装具は広く使用されており,その機能向上は重要な課題である.一方,高機能化は複雑な構造を有しやすく,必ずしも成功していない.我々は,コンパクト,制動調整可能,高い内外反抑制機能,という3点に注目し,調整機能付き後方平板支柱型短下肢装具(以下後方平板支柱型)の開発を行っている.【構造】現段階では,下腿カフ,後方平板支柱,ヒンジジョイント(支柱と足部の間),足部の4パーツで構成されている.後方平板支柱はバネ作用により背屈補助機能を有し,強度の異なる支柱を用いることで,その調整も可能である.ヒンジジョイントは背屈位20度から底屈位20度の可動範囲を有し,この間で初期背屈角度の設定と可動範囲の調整が可能である.ヒンジ部の上下にあるネジ調整にてこれらの設定が容易に行える.ヒンジジョイントの回転軸が足関節後方にあるため,大きな関節運動では下腿カフのずれとそれに伴う圧迫感をもたらす.この問題に関しては,カフと支柱の間にジョイントを組み込むことで解決されると考える.【抵抗実験】我々は,これまでの開発段階で後方平板支柱型の制御特性を検討するため抵抗実験を行った.方法は運動方向別に変位量ごとの張力を測定し,後方平板支柱型,両側金属支柱型,シューホーン型を比較検討した.後方平板支柱型,両側金属支柱型では底背屈方向で最も張力が小さく,内外反方向で張力が大きくなった.これに対し,シューホーン型では正反対の結果となった.後方平板支柱型は内外反抑制機能を備えていると判断した.【臨床応用】脳梗塞左片麻痺患者1例に後方平板支柱型を実際に使用してもらった.対象は54歳男性,発症から24週経過しており,左下肢のBr.stage IV,下腿三頭筋の筋緊張亢進が認められ,表在,深部感覚ともに軽度鈍麻していた.歩行能力はPDC(初期背屈角度3度),T-caneを使用して修正自立レベルであった.後方平板支柱型はPDCと比較し,快適歩行速度が0.1km/h速く,cadence,stride lengthともに大きかった.後方平板支柱型は軽くて歩きやすいという主観的意見があり,カフのずれに伴う違和感の訴えはなかった.【まとめ】我々は,コンパクト,制動調整可能,高い内外反抑制機能,という3点に注目し,短下肢装具の開発を行っている.抵抗実験において後方平板支柱型の制御特性が優れていることが示唆された.ヒンジジョイントが足関節後方にあることによるカフのずれに関しては,カフと支柱の間にジョイントを組み込むことで解決されると考える.今後としては,更に調整制度を向上させるため平板支柱の強度バリエーションを検討するとともに,実用化に向けて装具の耐久性についても検証を加え,臨床試験を行いたい.