抄録
【目的】昨年度の本学術大会において金属支柱付AFOの足継手位置について考察し、立脚期の接地した足部に対する下腿の回転軸(以下、下腿回転軸*)に足継手を設定することの有用性について報告した。その際、下腿回転軸は水平面上で外旋方向に向き、前額面上で内側が高く外側が低いため金属継手では軸通しやクレンザック継手などの機構の取り付けに問題を残した。そこで軸通しを必要とせず、制動機構も設定できる特殊ウレタン製の継手(GILLETTE,Becker Orthopedic社)を使用した継手付プラスチックAFOに応用できないかと考えた。今回は、足継手位置として下腿回転軸を設定して試作し、歳差運動様効果や従来の作成法で作成した装具との継手位置の違いによる影響を比較し考察を加えた。【方法】健常男性1名(年齢37歳、身長173.0cm、体重66.5kg)をモデルに格子法により下腿回転軸を計測した。これをもとに継手軸が下腿回転軸にある下腿回転軸型と足部の長軸に直交し外果の中央部の高さで床面と水平な従来の軸にある外果型の2種類の継手付プラスチックAFOを作成した。プラスチック素材はポリプロピレン4mm厚を使用した。装具製作のモデルとなった男性を含め7名の健常男性(平均年齢35.6±4.2歳、身長171.7±5.3cm、体重63.2±3.4kg)を被検者に、20秒/10m程度で一本杖を使用する2動作歩行を指示した。装具の立脚期の下腿の動きに及ぼす影響を中心に主観的評価を求めた。また、モデルの被検者についてビデオでの分析を行った。【結果と考察】各被検者にはかならずしも適合しているわけではなかったが、おおよその傾向は得られた。その結果外果型より下腿回転軸型が装具による立脚期の下腿の動きへの追随性が良好であった。外果型においての違和感は、立脚中期から踵離地にかけての下腿が下後方へ引かれるようなずれが最も多かった。ビデオにおいても反対側の歩幅が減少しており、下腿の前方への傾斜の抵抗が考えられた。さらに下腿の外側方向への誘導が多く、外果型の継手軸が足部長軸と直交することにより足部の向いている外側への移動を強いられるためと思われた。金属軸で多かった踵接地期から足底接地までのなめらかさについての指摘が少なかった原因として、下腿の進行方向への動きの追随性に関わるtoe-in効果が弾力性のある継手により吸収されたためと考えられた。下腿中心軸においては矯正力は減少しているが踵接地から足趾離地まで安定感があり、立脚中期から母趾方向への体重移動の円滑さが良好で、立脚期を通しての下腿の動きへの追随性など金属支柱付きAFOの歳差運動様効果と相似していた。よって、特殊ウレタン製の足継手を使用した継手付プラスチックAFOにおいても歳差運動様効果は認められ、歩行時の下腿の動きに対する影響が少ないことより有用と思われた。*これまで軸位置を"瞬間中心"としていたが、"下腿回転軸"に変更した。