抄録
目的 当センターでは、三次元動作解析装置を用いて歩行解析を行い、その結果を訓練内容の検討項目の一つとして用いている。その関節角度や関節モーメントはマーカーの変位や床反力を基に運動学的手法によって組まれた数式によって求められる推測値であり、マーカーの貼付部位のズレなどでその結果に違いを生じることが考えられる。そこで機器より求められる関節中心とレントゲン画像より計測した値とそれらより計算されるモーメントの違いを検討した。対象と方法 対象は健常人4名(男性2名、女性2名、平均年齢26.8歳)。方法は、三次元動作解析装置Peakを用いて自由歩行の歩行解析を行う。その前にマーカーを仙骨と左右上前腸骨棘に貼付したのち、骨盤の前後、左右側面のレントゲン撮影を行う。撮影された骨盤のレントゲンより股関節中心を同定し、仙骨マーカーから上下、前後、内外側の距離を求めた。求めた距離を装置の股関節中心を求める数式に代入し、歩行時の関節中心の位置を算出した。また、装置が自動的に算出する関節中心を求め、我々が計算し求めた関節中心と装置より得られた値を用いて各々の股関節外内転モーメントを求めた。 装置より求められた関節中心に対し、レントゲンより求められた関節中心の上下、前後、内外側と外内転モーメントの違いを立脚期で比較した。結果 装置から得られた股関節中心とレントゲンから得られた股関節中心の差の平均値は上下方向右-1.9cm左-1.7 cm。前後方向右-1.1 cm左-1.6 cm。内外側方向右-1.8 cm左-1.5 cmであった。内外転モーメントは、レントゲン画像より股関節中心を計算し、その値を用いて計算したモーメントが、平均で右8.7Nm、左8.4 Nm大きかった。考察とまとめ 三次元動作解析装置において、直接計測されるのは各マーカーの変位データや床反力データで、これらの値と解剖学的データを基に推定される関節中心、さらに標準化された数式モデルによって計算される関節モーメントなどは間接データであるため、用いる推定法や解剖学的データによって誤差が生じる。この誤差について、Stagniらは大きな誤差を生じると、関節モーメントや関節角度に影響が生じると指摘したが、臨床使用における誤差の許容範囲について統一した見解はない。 装置とレントゲンより得られた股関節中心には違いがあり、その値を用いて求められるモーメントにも違いを認められた。三次元動作解析において、マーカーを正確に貼付することは難しく、正確な結果を得るためには何らかの補正が必要と考えられる。そこで、診察時レントゲン撮影は必ず行われるため、その時にマーカーを貼付後、レントゲン撮影を行い歩行解析を行うことで、より正確な解析結果を得ることができると考えられる。