抄録
【はじめに】我々はこれまでサイレントピリオド(以下SP)が中枢神経系、特に大脳皮質の興奮性の変化を示す指標になると考え、SPを指標に肩外旋チューブエクササイズ(以下EX)の効果について検討してきた。今後我々はEX直後の効果や一定期間のEX実施における継時的な効果判定を行いたいと考えている。SPは対象筋に一定強度の等尺性随意筋収縮を維持させて記録する。EX前後で効果判定を行う場合など、同一日にSPを複数回記録する実験では、SPの記録時に等尺性筋収縮維持を繰り返し行うことにより、一定強度の収縮維持が次第に容易になることが考えられる。つまり、EXの有無に関わらずSPの記録を行う際に必要とする運動課題を繰り返すことが、中枢神経機能の興奮性に与える影響を考慮する必要がある。そこで本研究では、SP記録を同一日に複数回行った場合におけるSPの変動について検討した。【対象と方法】過去に被験者としてSP記録を経験したことのない健常男性8名の利き手側上肢8肢を対象とした。SPはVikingIIe(Nicolet)を用いて棘下筋より同一日に3度記録した。記録肢位は被験者をBiodexSystem3(Biodex Medical system,Inc.)のシート上端座位とし、利き手側の上肢を肩関節肩甲骨面上90度外転位、肘関節90度屈曲位で固定した。SP記録のための電気刺激はエルブ点(鎖骨上窩)より腕神経叢に加え、刺激条件として強度は最大上刺激、持続時間は0.2ms、頻度は0.5Hz、回数は20回とした。記録条件は探査電極を棘下筋筋腹上に、基準電極を肩峰に配置した。SPは肩外旋25%MVC等尺性筋収縮維持中に記録した。25%MVC維持は、BiodexSystem3のモニターを用い視覚的にフィードバックした。3度のSP記録間には十分な休憩をとらせ被験者に疲労感のないことを確認した。検討項目として、同一日の3度の記録におけるSP平均値の差の検定には一元配置分散分析を用いた。【結果】同一日に3度記録したSPには、有意な差はみられなかった。【考察】今回我々は、同一日に3回記録したSPにおいて、記録時に必要な運動課題を繰り返すことによるSPへの影響を検討した。今回の結果から同一日に3度記録したSPには有意な差はみられなかった。このことよりSPを記録する際の運動課題を繰り返すことによる中枢神経系の興奮性に変化はないものと考えられた。同一日に3度記録したSPの結果には再現性があることが示唆され、今後EXの効果判定に有用であると考えた。