理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP286
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測定・評価
座面の前傾が高齢者の座位姿勢に与える影響について
特に立ち上がり能力との関係から
*塩島 直路山口 光國
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キーワード: 座面前傾, 姿勢, 立ち上がり
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抄録
(はじめに)立位や座位で基底面を傾斜させて身体活動へ働きかける事は、臨床において古くより行われ、実際に期待される効果が得られることも多い。しかし、基底面の傾斜が、いかなる身体活動の変化を導くかについては十分に明らかにされていない。そこで今回我々は、座面を持続的に前傾させた場合の高齢者の座位姿勢について立ち上がりの能力との関係から調査を行ったので報告する。(対象・方法)対象は支持なしで座位保持可能な老人保健施設利用者および入所者49名(平均年齢83.3歳、男性17名、女性32名、うち片麻痺患者7名)であった。前方を注視するように注意を与え、両足底を接地させた状態で座位を保持させた。その際、大転子、胸骨剣状突起レベルにおける胸郭前後径の中点(以下、体幹中心)、耳孔にマーカーを添付し、左片麻痺患者を除いて原則的に左側方よりデジタルカメラにて撮影を行った。その後、座面を10°前傾させ5分間の座位保持を行い、座面を水平に戻した1分後に再度撮影を行った。撮影した座位姿勢をプリントアウトし、鉛直線に対する大転子-体幹中心、大転子-耳孔、体幹中心-耳孔の角度を計測した。また、鉛直線に対して前方に傾く場合を正の値とした。さらに対象者を、手すり等を使用せずに立ち上がれる者(立ち上がり可能群 27名)と使用しないと立ち上がれない者もしくは使用しても立ち上がれない者(立ち上がり不能群 22名)に分けて座面を前傾する前後での各角度の比較を行った。(結果)前傾後の各角度は立ち上がり可能群では、大転子-体幹中心の角度のみ-7.3±13.3°から-13.7±15.2°へ有意に変化した(P<0.01)。立ち上がり不能群では大転子-耳孔の角度が7.5±7.3°から3.2±9.2°へ(P<0.01)、体幹-耳孔の角度が19.1±11.4°から16.0±11.5°へ(P<0.05)それぞれ有意に変化した。(考察)傾斜刺激に対して安定した抗重力肢位を保持するために、重心位置ならびに身体各部の質量中心点との位置関係を保つ活動が身体の様々な部位でなされていると考えられる。今回得られた両群の角度の変化は、座面の前傾に対する異なる対応の結果と考えられる。両群の特徴的な対応傾向の機序については本調査だけでは言及することはできないが、座面の前傾は明らかに身体活動に影響を与えており、その後の身体活動に変化を与える可能性が示唆された。また、特に下肢筋力に見合わない立ち上がり能力の低下を呈する症例などでは座位での抗重力活動にも問題がある印象を受ける。その点も踏まえ、今後、検討項目を増やし調査する。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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