2017 年 39 巻 1 号 p. 24-28
38 歳女性.頭痛発症のくも膜下出血で受診した.急性期に動脈瘤を認めず,第14 病日の血管撮影で右内頸動脈にわずかな隆起性変化を認め,血豆状内頸動脈瘤が疑われた.MRI CISS 画像とCTA のMPR 画像を比較したところ,拡張部の前後に偽腔が広がり,近位側は眼動脈分岐部の内頸動脈後壁に及んでいると推測された.バルーン閉塞試験にて内頸動脈の遮断耐性は認められたが,眼窩内の血管が全く描出されなかったため,眼動脈を含む内頸動脈病変に対するtrapping は視力障害のリスクが非常に高いと考えられた.治療戦略をステント支援下コイル塞栓術とし,眼動脈を温存した.術後,視力障害を含めた神経症状はなく,動脈瘤の再発もなく経過良好である.本症例では,MRI や血管撮影の詳細な読影を行うことで,治療方針の決定のみならず,合併症リスクも回避することができた.