抄録
【はじめに】寝たきり予防のために反復起立運動が推奨されているが、その有用性は確立されていない。我々は反復起立運動を用いた運動負荷試験を試行し、従来から基準が確立されている自転車エルゴメータと比較することにより反復起立運動の運動負荷試験としての有用性について検討した。【対象と方法】健常若年男性17名(年齢22.8±2.7歳)を対象に自転車エルゴメータ(232CX COMBI社製)によるramp負荷と反復起立運動による段階的運動負荷を実施した。反復起立運動は高齢者への適応を考慮し2.5cmきざみで55.0cmから35.0cmまで高さ調節可能な起立台(自作)を用い、一分間に20回行い、30秒毎に起立台の高さを低くすることで負荷量を増加させた。運動負荷試験時の分時酸素摂取量(V(dot)O2)、分時二酸化炭素排出量(V(dot)CO2)、分時換気量(V(dot)E)、呼吸数を呼気ガス分析装置(AE-280S MINATO医科学社製)にて測定した。得られたデータから反復起立運動での負荷量とV(dot)O2、負荷量と心拍数(HR)の相関係数を求めた。また2種類の運動負荷試験における嫌気性代謝閾値(AT)時のV(dot)O2、HRの平均値と相関係数を求めた。更に反復起立運動における各負荷段階にて得られたHRの平均値を、その負荷量に対応するHR とし、35.0cmまでの負荷量増加に対するHR変化率(ΔHR/Δ高さ)をdと規定し、自転車エルゴメータで得られたAT時のV(dot)O2の体重補正値(以下V(dot)O2/W)との相関係数を求めた。各相関係数について両側t検定を行い、有意水準は5%とした。【結果と考察】運動負荷試験では各段階が短時間、漸増型、非定常的な運動負荷が最適であるとされている。反復起立運動での負荷量とV(dot)O2の間には1名を除き強い相関(r=0.83から0.99)が、負荷量とHRの間には17名全員に強い相関(r=0.81から0.99)が認められたことから、反復起立運動は直線的漸増負荷の一様式であると考えられる。また2種類の運動負荷試験におけるAT時のV(dot)O2(r=0.81)、HR(r=0.71)に強い相関が認められた(p<0.05)。更に自転車エルゴメータから得られたAT時のV(dot)O2/Wとd(ΔHR/Δ高さ)の間に中等度の負の相関(r=-0.51、p<0.05)が認められた。よって反復起立運動は体力指標としての妥当性を有し、d(ΔHR/Δ高さ)を求めることによりAT時のV(dot)O2推測が可能である(AT時のV(dot)O2/W=-4.86×d+25.41)と考えられた。しかし若年者を対象とした本研究の知見が個人差の大きい高齢者にそのまま適用できるわけではない。また実験中に下肢の筋疲労、臀部への衝撃痛などの訴えがあり、高齢者を対象とした安全かつ簡便で実用性のある運動負荷試験とするにはこれらを考慮し、更なる検討を進めていく必要がある。