抄録
【はじめに】慢性筋骨格系疾患の理学療法評価として、主に視診、触診や他動又は自動運動評価に加え、筋電図を用いた評価等が行われている。表面筋電図による評価は筋活動量、対称性、疲労や運動後のリラクゼーション等がある。今回、この筋リラクゼーションに着目し、健常者での簡単な運動課題で観察される運動前後の筋リラクゼーションを表面筋電図を用いて検討した。
【対象】健常男性7名(25.3±5.3歳)を対象とした。被験者は慢性疾患がなく、実験前に十分な説明を行い同意を得た者とした。
【方法】実験肢位は、被験者は椅子にて安楽な座位をとらせた。表面筋電図にはNora-xon社製Myosystem1200を用いビデオカメラ(MyoVideo)を同期させ、運動課題時の筋活動を計測した。(実験1)電極部位は、左右の僧帽筋上部線維(以下UT)とした。被験者に上肢安楽位から肩甲帯挙上運動を行わせ、約2秒間の保持、そして安楽位に戻す動作を行わせた。同様に、約90°までの上肢屈曲と外転運動、保持、そして安楽位に戻る動作も行わせた。(実験2)電極部位は、左右の頚椎傍脊柱筋(以下CPS:C4レベル)、胸鎖乳突筋(以下SCM)とした。被験者に中間位から頚部屈曲、中間位、伸展、中間位の順で動作を行わせた。そして、それぞれの肢位で約2秒間の保持を行わせた。実験1,2から得られた各肢位保持位における平均振幅より運動開始前後の安静時筋活動を比較し、筋リラクゼーションを比較検討した。
【結果】実験1よりUTについて検討した。最初の中間位筋活動を100%として比較すると、肩甲帯挙上運動後では、運動開始時と同様の筋活動に減少を認めた(96%から104%)。屈曲、外転運動後の安静時筋活動は運動開始前と比べ高くなる傾向が認められた(120%から254%)。特に外転運動後のUTはその傾向が著明であった(219%から254%)。実験2から、運動開始前と比較して頚部屈曲保持時に、CPS,SCMともに高い筋活動を示した(167%から197%)。活動間での中間位保持時の筋活動は高くなる傾向が認められ、屈曲位から中間位に移行した過程で特にCPSではその傾向が著明であった(154%から170%)。伸展位保持時はCPS,SCMともに動作開始時と比べ筋活動は高くなる傾向が認められた(129%から165%)。また各筋ともに著明な左右差はみられなかった。
【考察】今回、安静時と運動後の筋活動量から筋リラクゼーションを検討した。一般に運動最終域では筋リラクゼーションが得られると考えられるが、今回の結果から、個人によるバリエーションも大きく、運動後の筋リラクゼーションの評価には注意深い観察を必要とすると思われた。