理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP811
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測定・評価
動作時誘発筋電図測定における新しい手法
重回帰分析を用いた刺激強度調節
*田辺 茂雄村岡 慶裕富田 豊木村 彰男
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キーワード: 誘発筋電図, M波, 重回帰分析
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抄録
【はじめに】誘発筋電図を測定する際には,H波振幅を比較するために刺激条件を一定に保つ必要がある.しかし,刺激電極に表面電極を用いて運動中の誘発筋電図を測定する際には,運動による刺激部位の変動による刺激条件の変化が大きいため,刺激条件を一定に保つ事が困難である. 刺激条件の確認はM波振幅を指標として行われている.刺激部位が大きく変化する場合の一般的な方法は,運動中の角度毎にM波を測定し,各角度で刺激強度を変更する.この方法では,最初に定めた角度でしか測定する事ができないため,運動全域の誘発筋電の動態を捉える事ができない. 現在,我々は重回帰分析を用いた刺激強度調節法を考案し,その有効性を検討している.この方法は,ある角度で目的のM波振幅を生じさせるために必要な刺激強度をオンラインで予測し,調節する.今回,従来行われてきた方法と比較した結果,有用な成績を得たので報告する.【対象と方法】健常成人5名の右足5肢を本研究の対象とした.刺激条件は持続時間1msの陰極性矩形波を用い,膝窩部より脛骨神経を刺激した.刺激間隔は1sで行った.記録電極はヒラメ筋の筋腹上においた.まず,従来の方法として膝関節0度,45度,90度,135度でそれぞれ5%Mmaxが出現する刺激強度を測定し,その4段階の刺激強度で各角度においてそれぞれ20回ずつ計80回測定した.次に提案した方法により刺激調節を行い,測定した.まず本実験の前に,説明力が高い変数を抽出して重回帰モデル式を作成した.本実験では,最初に膝関節0-135度の屈伸運動を5分間行い,その運動中5%Mmaxに近いM波が出現する刺激強度をランダムに与え,角度と刺激強度とそのときに得られたM波振幅から,重回帰分析を用いてそれぞれの変数の係数を推定した.次に推定された式を用いて0-135度の屈伸運動を80秒間行い,運動中のM波振幅を計80回記録した.比較項目は,(1)4種類の一定の刺激強度でのM波振幅,(2)従来の方法であるそれぞれの角度で5%Mmaxが出るよう刺激強度を調節した時のM波振幅,および(3)新しい方法で測定されたM波振幅とした.それぞれ分散の差をみるためF検定行い,あわせて平均の差をみるためt検定を行い,比較検討した.【結果と考察】重回帰分析を用いた新しい方法と4種類の一定の刺激強度では,2例の全刺激強度で有意に新しい方法のM波振幅が5%Mmaxに近い値となり,3例の3種類の刺激強度で有意に新しい方法のM波振幅が5%Mmaxに近い値となった.次に,従来の方法と新しい方法を比較すると,2例では有意差がなく,従来の方法と同程度5%Mmaxに近い値をとなった.今回の実験では2例でのみ従来の方法と同程度の刺激を行う事ができたが,重回帰分析を用いた新しい方法は,従来の方法で不可能だった運動全域での刺激強度を予測する事ができ,全体的な誘発筋電の動態を測定する事ができる.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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