抄録
【はじめに】国の『第9次へき地保健医療計画』に基づき,平成14年4月,院内に愛知県へき地医療支援機構が設置された.この計画の実施要綱では,へき地医療拠点病院による支援事業として,「へき地診療所等への医師及び看護師等の派遣並びに技術指導,援助に関すること」と記されている.これはへき地診療所等に勤務する医師及び看護師等の職員が不在となる場合の代替者の派遣を意味するものとの解釈であるが,愛知県ではへき地診療所等に有しない理学療法士や作業療法士等の技術指導及び援助に関しても支援事業に含まれるよう,診療所を有する町村と拠点病院の間で協定書を結ぶことができた.今回は,このへき地医療支援事業のリハビリテーション(以下リハ)の取り組みと実績について報告する.【調査内容】平成13年度の取り組みとして,県内のへき地診療所のひとつ作手村国民健康保険診療所(以下作診)からの依頼により,同年9月から平成14年3月までの7ヶ月間理学療法士によるリハ技術支援を実施した.依頼回数は月1回ずつ計7回,対象患者数10人,延べ31件であった.最初の5ヶ月は対象者が1回につき3_から_4名であったが,2月,3月は7例ずつありリハの需要を開拓した(第41回全国自治体病院学会にて報告).平成14年4月からは,へき地医療支援事業として引き続き作診にリハ技術支援を実施し,11月には額田町北部診療所(以下北診)も支援を開始した.平成14年4月から11月の対象患者,実施件数,技術支援内容,看護職員及び患者の意見等について調査した.【調査結果】対象者は男性11例女性8例,年齢37_から_99歳,疾患は脳血管障害後遺症11例,パーキンソン症2例,その他6例の計19例であった.支援回数は作診8回,北診1回,支援・指導内容は,四肢の拘縮予防方法,ベッド上・床上起座方法,床からの起立介助方法,歩行介助の方法,摂食嚥下訓練,排痰援助方法の指導であった.なお1例は在宅での支援であった.支援の効果として,これまで受けられなかったリハを受けることによって患者自身が積極的に動くようになり,膝立ちや床からの起立等ができるようになった.また看護職員は介助に対する自信が向上した.意見として患者,医療者とも毎週のリハ支援を希望していた.【考察】へき地医療支援におけるリハ技術支援の目的は診療所に勤務する職員,主に看護師への技術指導である.リハの需要があっても常勤として配置するほどではないため,へき地医療支援として技術指導していくことは望ましいと考える.平成14年度は月1回の依頼であったが,中核病院で充分なリハが受けられず在宅へ帰る患者もあり,診療所でのリハの継続に期待を抱いていることは容易に理解できる.新たに受診する患者も含め診療所及び在宅でのリハの需要がさらに高まれば,支援の頻度を増やし患者への直接的援助指導の機会を増やすことは意義あるものと考える.