抄録
【はじめに】近年、各施設において在院日数の短縮、医療の質の向上を目的に、クリティカルパス(以下パスと略す)が導入され、当院においても様々なパスを導入してきた。その中で、平成14年4月より乳癌手術に対するパスが導入され、パスを導入した症例全例に対し、理学療法を行なってきた。今回、短期間ではあるが、パスの実施状況について考察する。【当院におけるクリティカルパス】当院においては、パス導入により術後3日目より肩関節の運動が制限無く許可されるが、乳房再建術などが施行された場合、術創部の安定の面から術後術後10日目より肩関節の運動が制限無く許可されるプログラムとなっている。これらすべての症例に対し、術前より患者への配布用パンフレットを配布し、術前より運動方法を指導、実施している。【乳癌手術に対するクリティカルパスの実施状況】これまで、平成14年4月から10月までに乳癌術後のパス導入者は67名、平均年齢55歳である。また、平均在院日数は14.4日となっている。このうち58名が胸筋温存乳房切除術や乳房温存術が施行され、9名が乳房再建術を施行されている。退院時の可動域については、胸筋温存乳房切除術や乳房温存術を施行した症例では167±10度、乳房再建術を施行した症例では、127±25度であり、開始時の可動域に回復を要した期間については、胸筋温存乳房切除術や乳房温存術を施行した症例では、41名が術後10日までの入院期間中に可動域を回復出来たが、残り16名については術後より平均24日を要した。次に乳房再建術を施行例では、術後13日までの入院期間中に可動域を回復出来た症例は1名であり、残り9名については、術後より平均43日を要した。【考察】当院ではこれまで、乳癌術後のリハビリテーションの対象者が女性であり、その特殊性から病棟において看護師主導で行い、病棟での運動のみで改善されなかった症例に対し理学療法を施行してきた。しかし、パス導入に伴い全例に対し理学療法をすることとなった。今回の結果では、胸筋温存乳房切除術や乳房温存術を施行した症例においては退院時までに良好な可動域を獲得出来たと考えるが、乳房再建術に関しては、入院中には十分な可動域を獲得出来ず外来での理学療法の継続が必要である症例がほとんどであった。これについては、植皮術を施行したため術創部の安定を確認したうえで積極的な可動域訓練を現在施行しているためであると考える。この、乳癌手術は手術侵襲の縮小化にあり、可動域制限や上肢リンパ浮腫を伴う症例は軽減傾向にあるとされている。近年、在院日数の短縮に伴い、早期に患者のQOL獲得が求められる中、理学療法士が術前より関わることで、術後の運動に対する不安を取り除くだけでなく、適切な運動方法を指導することにより、早期に肩関節可動域の獲得が可能となり、パス通りの退院に向けて日常生活上での制限を入院中に改善できると考える。